<社説>クアッド首脳会合 米中対立激化させるな

 日本、米国、オーストラリア、インドでつくる枠組み「Quad(クアッド)」は米国時間の24日、4カ国首脳による初の直接会合を開いた。米国に次ぐ第二の経済大国として台頭する中国に対抗する包囲網という色合いが強く、米中対立の激化でアジア太平洋地域の分断と緊張が増すことが懸念される。

 自由と民主主義の価値を国家間で共有することに異論はない。一方で、大国の思惑による線引きで経済のブロック化が進めば、世界経済が行き詰まってしまうことは歴史を見ても明らかだ。米中の対立激化を避け、相互に恩恵あるアジア太平洋の経済圏づくりへ向けて、日本は積極的な役割を果たすべきだ。
 米国は、クアッドで扱うのは新型コロナウイルス対応やクリーンエネルギーなど「実務的な案件」だと強調し、安保色を打ち消そうとしている。しかし、15日には米英豪による安保の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設したばかりだ。この3カ国にカナダ、ニュージーランドを加えた情報監視網の枠組み「ファイブ・アイズ」もあり、日本にも参加を促している。
 日米豪印のクアッドも、中国をにらんで経済、安保の幅広い分野で戦略的な連携を広げていく狙いがある。インド太平洋に海洋進出を強める中国に対抗し、軍事同盟化が強まることも想定される。
 バイデン大統領が4カ国のトップをホワイトハウスに集めて民主主義陣営の結束を確認するという会合に、日本からは退陣が決まっている菅義偉首相が出席した。レームダック(死に体)の首相が、将来にわたる多国間の合意に確約を与えたのは今後に禍根を残すものだ。
 憲法は条約の締結は内閣の職務と定めつつも、国会の承認を経ることが必要としている。現在は国会が閉会し、菅氏の後任を決める自民党総裁選の最中という政治空白が生じている。クアッド首脳会合を前に国内議論はほとんど行われていない。菅氏の今回の訪米は、主権者である国民をないがしろにしている。
 「世界の成長センター」と評されるアジア市場で中国の存在感はもはや無視できない。中国と取引する日本企業も多く、経済分野で相互依存は深まっている。米国に一方的にくみすることは、コロナ後の回復を目指す日本経済の足を引っ張りかねない。
 日本をはじめとする多国間の通商協定「環太平洋連携協定(TPP)」は、中国と台湾の加入申請の取り扱いを巡り、参加国は今後難しいかじ取りを迫られる。だが、米国も自国の利益を優先して既にTPPから離脱しており、アジアにおける貿易戦略や熱意には疑問符が付く。
 日本は対中包囲に躍起な米国の戦略に付き従う役割ではなく、各国と等距離の協調外交により、域内の経済、安全保障を安定させる枠組みの構築を主導すべきだ。



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