<社説>入管に違憲判決 人権尊重し公正手続きを


社会
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 スリランカ出身の男性2人が難民認定申請の棄却を告げられた翌日に強制送還され、不服とする裁判を起こす時間が与えられなかった。東京高裁は「憲法が保障する裁判を受ける権利を侵害した」とし、東京入国管理局の対応を違憲と認め、損害賠償を命じた。

 日本は国際人権規約を批准し、外国人を含む全ての人の身体の自由を保障している。出入国在留管理庁は職権を乱用せず、人権軽視の対応を改め、人権を尊重して公正な手続きが求められる。
 判決などによると、2人は2011~12年に難民認定を申請したが認められず、14年12月17日に異議申し立ての棄却を告げられた。東京入管に収容され、外部と連絡を取れないまま、翌18日早朝に集団送還された。
 東京高裁の平田豊裁判長は、入管側が2人をチャーター機による集団送還の対象者としており、確実に実施するため、直前まで意図的に棄却を告げなかったとし「2人が難民に該当するか、裁判を受ける機会を実質的に奪うもので違法だ」と指摘した。
 裁判で国側は「2人は在留し続けるために難民申請したにすぎず、救済の必要性は乏しかった」と主張したが、判決は「難民該当性の問題と、裁判を受ける機会の保障とは別の問題だ」と退けた。行政機関である入管の対応は、日本の三権分立や立憲主義すらも脅かす行為といえる。
 入管行政に詳しい全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は「三権分立の観点から、司法の判断を仰ぐ権利が誰にもある」とし、憲法論に踏み込んだ東京高裁判決を「画期的」と評価した。在留資格がなく強制送還された外国人にも、日本国憲法に基づく人権保障が及ぶと判断した点も大きな意味があるとする。
 名古屋出入国在留管理局に収容中だったスリランカ人女性が死亡した問題もある。収容中における医療体制の不備や、人命と人権を軽視し、情報が幹部に報告されない閉鎖的な組織の問題も明らかになった。記録映像を見た女性の遺族は「動物のように扱われた」とショックを受け、上川陽子法相も謝罪した。
 入管当局は、在留資格のない人などを原則すべて強制送還まで収容する「全件収容主義」を採用する。収容施設は本来、本国への送還まで過ごす「一時的」な場所だが、生命の危機を訴えて送還を拒む人もいる。収容の長期化や死亡の事案が相次ぎ、2007年以降、17人が亡くなった。
 2月に提出された入管難民法改正案では全件収容主義の見直しも議論されたが、入管の裁量次第という疑念を拭えず、世論の反発もあり案は見送られた。全件収容主義の抜本的な見直しも必要だ。
 出入国という水際の一線で、本質を見極める難しさもあるだろうが、人権を軽んじる理由にはならない。入管当局は人権を重視し、公正な手続きを肝に銘じるべきだ。