<社説>岸田首相の政治姿勢 不都合な真実と向き合え

 発足したばかりの岸田政権が、臨時国会で8年9カ月にわたった安倍・菅政権が残した「負の遺産」に頰かむりする姿勢が目立つ。

 安倍内閣で起きた森友、加計両学園、桜を見る会問題は深刻な政治不信を招いた。菅政権の総務省幹部への接待問題や日本学術会議の任命問題もしかりだ。
 岸田文雄首相は、自民党総裁選で「信頼回復」を掲げたはずだ。ならば安倍、菅内閣の政治姿勢の総括は不可欠だ。「不都合な真実」に真摯(しんし)に向き合わないのであれば、政治の信頼回復は絵に描いた餅にすぎない。
 11日の衆院本会議での代表質問で岸田氏は、森友学園を巡る財務省の公文書改ざん問題の再調査については「国会などで説明を行ってきた」として否定した。総裁選前に報道番組で再調査を示唆していたがトーンダウンした。
 8日の所信表明演説で桜を見る会を巡る問題は触れず、成長戦略で「科学技術立国の実現」を打ち出しながら科学に関わる政策に提言などをする日本学術会議会員の任命拒否にも言及しなかった。
 学術会議会員の任命拒否は、菅義偉氏の首相就任から間もない昨年10月に発覚。菅氏は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点から判断した」などと繰り返し、具体的な理由は「人事に関わる」と説明を回避し続けた。松野博一官房長官は7日の記者会見で、岸田内閣として新たに任命する考えがないとの認識を示した。「任命権者である(当時の)菅義偉首相が最終判断したことから、一連の手続きは終了したものと考えている」と述べた。
 この問題は学問の自由、言論の自由という日本国憲法の根幹に関わる。「過去の自民党は、中曽根康弘氏や宮沢喜一氏のように改憲、護憲の立場を問わず、憲法を意識して権力を行使する人がトップやその側近の地位に就いていた」(南野森九州大教授)。立憲主義の逸脱は許されない。岸田氏には「負の遺産」を解決することが求められる。
 政治の信頼回復は、過去の問題の清算だけではない。自ら発した言葉に誠実であるかどうかも問われる。岸田氏は軌道修正が目立つ。
 一例を挙げれば、11日の衆院本会議で、株式売却益をはじめとする金融所得への増税を先送りすると表明した。格差是正を目指す分配政策として、富裕層の税負担引き上げを念頭に金融所得への課税強化を検討課題に挙げていた。富裕層から税金を多く取り、生活に苦しい低所得層に子育てや教育支援などとして配ることで、中間層を拡大する方針だった。
 だが、株価の下落傾向を踏まえ早くも軌道修正した。衆院選も意識したのだろうか。安倍氏、麻生太郎氏という2人の首相経験者の影を感じさせる政権だ。岸田氏には政治家としての主体性、リーダーシップが問われる。



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