<社説>嘉手納爆音原告3万超 住民の怒りに向き合え

 第4次嘉手納爆音訴訟の原告数が3万人を超えた。米軍嘉手納基地の周辺住民が、米軍機の騒音被害を訴えて夜間・早朝の飛行差し止めなどを求めている訴訟である。過去最多で、全国最大規模の原告団となる。

 原告数の増加は訴訟の認知度が上がっていることも要因の一つだろう。だが最も大きい理由は、米軍機の夜間・早朝の飛行を原則禁ずる騒音規制が守られず、異常な爆音が放置され続けていることだ。原告団がここまで膨らんだのは住民の怒りの表れと言える。
 裁判所はこれまで、国は米軍機の運航を制限できないとする「第三者行為論」によって飛行差し止めを認めていない。しかし住民は既に我慢の限界に達している。騒音が放置され続ける限り、訴訟は繰り返されるだろう。来年は沖縄が日本に復帰して50年。いつまで理不尽を強いるのか。政府や司法は住民の怒りに向き合い、飛行差し止めに向けて対処すべきだ。
 第1次訴訟が提起された1982年から39年になる。当時、原告約900人が立ち上がった。12年後の94年、一審で騒音被害の違法性を認め、うるささ指数(W値)80以上の地域に住む住民の過去分損害賠償が認められた。
 2000年には約5500人の原告が第2次訴訟を起こす。裁判所は「騒音の状況改善を図る政治的責務を負う」と指摘した。
 第3次訴訟は11年、第2次の約4倍に上る2万2058人の原告が起こした。高裁は過去の騒音被害に対して計約261億2500万円の賠償金を支払うよう国に命じた。
 しかしいずれの訴訟でも過去の賠償は認める一方で飛行差し止めは認めていない。その論拠になっている第三者行為論の背景には統治行為論がある。「高度の政治性を有する安保条約は司法判断になじまない」という考え方だ。しかし、そのような思考は、国の対米従属姿勢にお墨付きを与えるだけでなく、主権を放棄するに等しい。
 国の姿勢や司法の判断は、国民の命や人権よりも米軍の運用を優先しているかのようだ。これでは住民が納得できるはずがない。
 訴訟で健康被害の実態も明らかになった。第3次訴訟では、世界保健機関(WHO)欧州事務局が示した騒音に関するガイドラインを基に、松井利仁北海道大教授が証言した。嘉手納基地周辺住民1万7454人が高度の睡眠妨害を受けており、騒音が原因となって虚血性疾患になる人が年間51人に達し、10人が亡くなっていると推定した。
 そもそも嘉手納基地は沖縄戦時に日本軍が飛行場を建設し、米軍が本土攻撃の拠点として占領した。土地を奪われ周辺に追いやられた住民を含む多くの人々の「静かな夜を取り戻したい」というささやかで切なる願いに応えられないのなら、基地を撤去してもらうほかない。



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