<社説>学校問題行動調査 安心して学べる環境を


社会
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 文部科学省が発表した2020年度の問題行動・不登校調査で、県内小中高校・特別支援学校の暴力行為、いじめは千人当たりの発生・認知件数が全国平均を上回った。

 見過ごせない事態だ。同時に新型コロナウイルスの感染予防などを理由とした登校控えが小中高校で計960人いた。学校へ行くことをリスクと考える児童生徒がかなりの数に上る現実がある。
 問題行動を根本的に解決する方策が求められるだけでなく、感染防止策のさらなる徹底など、子どもたちが安心して学校に通い、学べる環境をつくるのは全ての大人に課せられた責務である。
 20年度の千人当たりの暴力行為発生件数は全国5.1件で、県内は2倍超の10.5件だった。いじめ認知件数も20年度は県内の55.7件に対し、全国は39.7件である。
 いじめの認知に関しては、大人が見えない状況での問題行動が放置されず、学校側が問題を認識し、関与できる状況をつくった側面もある。
 発生率の高さもさることながら重要なのはその後の対応にある。いじめに関する「現在の状況」では、県内の認知件数1万2200件のうち、解消したのは69.7%(8508件)にとどまる。全国は認知件数51万7163件のうち77.4%(40万495件)が解消したと報告されている。
 この差を埋める方策が必要だ。例えば学校の問題に法的助言を行う弁護士(スクールロイヤー)のさらなる活用、現在は導入されていない小中学校へのスクールロイヤー配置などが考えられる。
 問題が起きる前の予防や起きてからの速やかな解決へ、法律家の助言は有効と考えられる。学校の問題といえど、教職員だけにとどまらない体制構築が必要とされる。
 コザ高校の部活動顧問による行き過ぎた指導で生徒が自殺した問題では、県教委の調査が不十分だった。県庁部局に再調査する第三者委員会を設けたが、本来は教委が主導すべき事案だ。教委の指導・監督能力も問われている。
 同様にコロナ対策でも不安を感じる保護者や子どもたちに応える体制が求められる。
 自宅でも学べるオンライン授業は一つの手段だが、インターネット環境がない世帯もある。那覇市や沖縄市は無償で通信機器を貸し出したが、那覇市では通信網に過重な負荷がかかり、障害が発生した。
 感染予防策についても医療専門職でない教職員に負担をかけず、看護師派遣など社会全体で学校での安心・安全を確保する必要がある。
 文科省は昨年、感染症対策専門家の学校派遣事業を打ち出したが、どのように活用されているか検証が必要だ、
 憲法26条は国民が教育を受ける権利を保障すると同時に、保護者に子どもの学ぶ権利を保障するよう義務付けている。子どもたちの学習環境がこれ以上悪化しないよう社会全体で策を講じるべきだ。