<社説>21衆院選 コロナ対策 医療体制拡充が重要課題


社会
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 31日投開票の衆院選は、新型コロナウイルス感染症をいかに封じ込めるかが最大の争点だ。今後、感染爆発が再び起きても対応できる医療体制の確保や拡充が最も重要な課題と言える。

 感染者数は全国で減少傾向にあるが、再び変異株が猛威をふるう可能性は否定できず、第6波への懸念は拭えない。多くの専門家は、流行には季節的周期があるため、第6波は「必ず来る」と予測している。ワクチン接種が進んでいる国でも再び感染が拡大しているケースがあり、日本もそれに備える必要がある。
 コロナ対策を巡っては、各政党の多くが医療体制の整備や拡充を挙げている。類似した対策が並ぶものの、有権者は各党、各候補者がどの政策に力点を置き、何を優先して取り組むのか、具体的に検討し投票先を選んでほしい。
 与党の自民は年内の経口薬普及促進を提唱し、第6波に備え、重症者数や死亡者数の極小化、自宅療養者数の減少を目指し、病床・人材の確保に取り組むとする。公明はワクチン・治療薬の国産化を国家戦略に位置付け、実用化に必要な法整備を早期に行うとうたっている。
 野党の立憲民主は、入院できずに自宅療養で死亡した例が相次いだ事態を「自民党政権の失敗」と批判。地域医療構想を見直し、公立・公的病院の統廃合や病床削減方針を転換することを強調する。
 共産は感染症病床や救急救命体制の予算の倍増を主張。日本維新の会は米疾病対策センター(CDC)を参考にした「日本版CDC」を首都圏と関西圏に整備すると表明した。国民民主は自衛隊の協力を得て臨時医療施設を早期に開設することなどを掲げた。
 一方、10万人当たりの感染者数が全国最悪である傾向が続いている沖縄の現状は、より深刻と言える。沖縄の実情に適した対策が必要だ。
 島しょ県であるため、医療の受け皿が脆弱な離島が多くあり、感染拡大した場合のリスクは大きい。鍵を握るのは、水際対策だ。感染が抑えられていないのは、それが甘いと言うほかない。水際対策がうまくいけば本来、台湾やニュージーランドのように効果的な封じ込めができるはずだ。
 また、PCR検査の拡充も重要だ。民間検査は増えたが、行政検査はまだ少ない。経済的な困窮者が検査費用の負担を避け、検査を積極的に受けない行動を取る恐れもある。無料で検査できる体制を築くことが望まれる。
 沖縄選挙区に立候補した候補者たちも、コロナ対策を巡る論戦は活発だ。各候補者は医療体制やPCR検査の拡充、ワクチン接種の促進、水際対策を重視する点では、ほぼ共通している。ただ優先課題の捉え方には違いがあるので、有権者は見極めてほしい。全国に比べ、より厳しい状況が続く沖縄では、コロナ禍をどう脱却するかを選ぶ今回の1票はひときわ重い。