<社説>21衆院選 辺野古新基地建設 政府の姿勢再び問われる


社会
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 衆院選沖縄選挙区では、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設の是非も大きな争点の一つだ。

 昨年から続くコロナ禍によって、米軍基地問題が埋没し、議論が低調になってはならない。新基地建設は沖縄の将来を左右する問題だが工事は続いている。衆院選は、県民が投票を通して、この問題に対する意思を示す大切な機会だ。
 2014年の県知事選を契機に築かれた「オール沖縄」は、革新系政党と一部の保守政治家、経済人が「辺野古新基地反対」の一点で結集した枠組みだ。以降、県内の主要選挙や政局は、新基地建設を進める自公政権と「オール沖縄」の対決構図によって展開されてきた。今回の衆院選も沖縄選挙区は、工事を強行する政府の姿勢を認めるのか、認めないのか、再び有権者の審判が下る。
 衆院選は政権選択という側面だけではなく、沖縄にとって米軍基地問題の象徴として辺野古新基地建設の是非が鋭く問われることになる。
 過去の国政選挙を振り返ると、「オール沖縄」の候補者は14年の衆院選で沖縄4選挙区全てで勝利し、16年と19年の参院選も制した。一方、自公の候補者は17年の前回衆院選の沖縄4区で勝利したものの、残り3選挙区は「オール沖縄」に敗北している。
 前回衆院選から4年経過し、新基地問題は新たな局面を迎えている。埋め立て海域に軟弱地盤が見つかり、工事完成のめどが立たないにもかかわらず、政府は18年12月に埋め立て土砂を投入した。防衛省の試算では、新基地完成には12年を要する。地盤改良工事がうまくいけばの話である。予算は約9300億円を見積もる。完成の見通しが立たない工事に膨大な予算と年月を費やすことの可否を再考する必要がある。
 農林水産相が県にサンゴの移植を許可するよう指示したのは違法だとして県が取り消しを求めた訴訟では、最高裁の裁判官5人のうち2人が県側の主張を認めた。判断が分かれたのは、軟弱地盤の存在が大きい。裁判官の一人は「護岸工事という特定の工事のみに着目」して是非を判断することは「『木を見て森を見ず』の弊に陥る」と述べた。工事の行き詰まりを指摘したのだ。
 軟弱地盤の他にも、沖縄戦の激戦地だった本島南部の土砂を新基地建設に向けた埋め立てに使用する計画が明らかになった。その是非も重要な争点だ。各候補者は態度を明確にすべきである。
 本紙が国会会議録検索システムで調べたところ、18~21年の間でコロナ拡大が問題になって以降、辺野古新基地を巡る国会論戦の機会が減っている。コロナ対策や経済浮揚策も重要だが、国会や選挙戦で新基地問題の論戦も深めるべきだ。有権者は公約や論戦を見極め、ぜひ意思を示してほしい。この問題に対する沖縄の有権者の判断は、県外・国外からも注目されている。