<社説>軽石漂着で被害拡大 速やかに公的支援を


社会
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 海底火山噴火の影響とみられる大量の軽石が県内各地に漂着・漂流し、漁業や観光に影響が出ている。

 国の災害復旧制度を活用して速やかに軽石を撤去してもらいたい。同時に被害を受けた漁業者や観光関連の事業者に対する公的支援が必要だ。
 軽石は8月中旬に沖縄本島から東に約1400キロ離れた小笠原諸島・硫黄島近海の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火が原因とみられる。
 9月下旬から10月はじめにかけて南北大東島で漂着が確認された。海流に乗って沖縄本島周辺に押し寄せ、県内全域に広がりつつある。
 県によると県全体の漁船のうち25%が出漁を控えた(25日現在)。漁港内のいけすのグルクマが石をのみ込んで150匹以上が死ぬ被害も確認された。海面が軽石で覆われるため、モズクの生育不良や、サンゴに致命的な影響を与えかねない。12月から始まるソデイカ漁への影響も懸念される。
 本島北部のリゾート地をはじめ各地の海岸に軽石が漂着、浮遊しマリンレジャーが休止に追い込まれている。軽石漂着による景観の悪化も観光地として痛手だ。
 軽石の大量漂着、漂流は自然災害である。県や市町村は、新型コロナウイルス対策で、財政が逼迫(ひっぱく)している。国の支援が欠かせない。そこで災害復旧制度を活用して、軽石を早急に回収してもらいたい。復旧事業の対象とならない部分は、当面県が単独で支援する必要があろう。
 東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は「軽石は塩分を含んでいるため、簡単に埋めて処分することができず、費用をかけて粉砕するには量が多すぎる」と指摘する。回収後の処分と費用負担についても国が支援してもらいたい。
 観光に与える影響も考慮しなければならない。新型コロナウイルスの影響で稼ぎ時の夏場の需要を失い、10月に入ってようやく客足が動き出した矢先だった。事業継続のための支援が必要だろう。
 今後の課題として、海底火山の噴火後、軽石が南西諸島へ漂着する可能性を予測する仕組みを整えておく必要があるのではないか。
 軽石が流れる道筋は、衛星写真などで把握することができるという。黒潮など海面付近の海流予測を基に専門家がシミュレーションした結果、福徳岡ノ場から噴出した軽石は、8月の大規模な噴火のあと、沖縄や奄美に流れ着いたとみられる。その後、時計回りに旋回し、11月上旬にかけて、四国付近の沖合まで進むと予想される。
 軽石の沖縄漂着は初めてではない。35年前にも漂着している。新たな噴火によって再び漂着する可能性がある。漂着場所がある程度予測できれば、オイルフェンスを用意して軽石の流入を防ぐなど対策を立てることができたのではないか。ぜひ教訓として生かしたい。