<社説>枝野立民代表辞任 リベラルの原点忘れずに


社会
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 立憲民主党の枝野幸男代表は2日、敗北した衆院選の責任を取り、代表を辞任する意向を表明した。立民は改選前の110議席を96議席に減らし、結党以来党を率いてきた枝野氏もトップの座を退くことが避けられなかった。

 共産党などとの野党共闘の戦略の成否に焦点が当たるが、地方組織が脆弱(ぜいじゃく)なことなど基盤の弱さも露呈した。リベラルな社会や政策を指向する有権者の受け皿になるという原点を肝に銘じながら、態勢の立て直しが急務となる。
 沖縄については、立民は衆院選公約で米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について「中止」を打ち出した。今後、新たな代表選びが本格化する。党首交代で新基地反対の公約が簡単にぶれることがあってはいけない。
 2017年の衆院選を前に、当時野党第1党の民進党が小池百合子氏率いる希望の党への合流を進めたが、小池氏が政策で一致しない議員を受け入れないと表明したことから、「排除」の対象となるリベラル派議員が反発する事態となった。
 有権者の間にも、民進と希望の合流で国政にリベラル支持層の受け皿がなくなるという危機感が広がり、SNS上で「枝野立て」のコメントが話題となった。そうした期待を背負って新党結党に動き、自民1強政治に対抗する150人規模の野党第1党へと立民を押し上げてきた枝野氏の実績は評価したい。
 森友・加計問題や「桜を見る会」を巡る問題、日本学術会議の会員任命拒否など、長期政権による政治の私物化という弊害が顕著になった。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認など、政権が数の力に物を言わせて重要法案を押し切っていく事態も相次いだ。法によって国家権力を縛る立憲主義の基本原則を主張する勢力の重要性が損なわれることはない。
 立民は今回の衆院選で213の選挙区で4野党と候補者を一本化して臨んだが、与党系139勝に対し5野党は59勝で終わった。ただ、1万票差以内で敗れた選挙区は30を超える。枝野氏が主導した野党の共闘は競り合いに持ち込んだものの、躍進にはつなげられなかった。
 全国で小選挙区の投票率は55.93%にとどまった。戦後3番目の低さだ。なぜ有権者は投票所に足を運ばなかったのか。野党共闘は自公との対決姿勢を鮮明にしたが、政策論争が十分有権者に届かなかったのではないか。有権者の声に耳を傾け、問題の所在を明らかにし、解決策を提示することが政党の役割だ。立民は今後、自らの立ち位置を有権者に示すことが求められる。
 米軍基地の県内移設反対の民意が何度も示される中で、自民党は辺野古新基地建設を進める姿勢を貫いている。沖縄の声を受け止める勢力が国政から失われれば、政治への失望を広げることになる。