<社説>20年度検査院報告 コロナ対策を精査せよ


社会
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 会計検査院の2020年度決算検査報告が岸田文雄首相に提出された。報告で指摘された税金の無駄遣いは210件、総額2108億7231万円に上る。

 そのうち新型コロナウイルス対策費では布製マスクの大量保管や持続化給付金事業の再委託など、ずさんな契約や管理の実態が判明した。
 コロナ対策で緊急性が求められたことを言い訳にしてはならない。本当に必要な人に支援が届くのか、今後の対策では内容を精査すべきだ。
 「アベノマスク」などと国民から批判された布製マスク配布は厚生労働省、文部科学省が発注し、約442億6338万円を支払った。
 しかし緊急性を理由に随意契約を交わし、品質保証や素材などの仕様書もなかった。結果的に不良品検品などに21億円も無駄な支出をした。
 さらに「効果が薄い」といった理由から布製マスクは国民に受け入れられず、21年3月時点で約8272万枚もの在庫を抱えた。保管費は20年8月~3月までの8カ月間で約6億円、月にして7500万円もの巨額となった。
 新型コロナウイルスのまん延防止のため、政府は繰り返し外出自粛や時短営業、イベントの中止・延期を国民に求めた。一方で営業補償や雇用維持に振り向けた予算は十分な額だったとはいえない。
 コロナ対策事業の予算額約65兆円のうち未執行額は約3割の約22兆円に上る。使途がなく繰り越さない不用額も1兆円を超える。
 使い切れなかった23兆円を補償に振り向ければ、休業や時短営業が続く中でも事業を継続できた例もあったはずだ。コロナ対策迷走による被害は安倍・菅政権の失政が招いたといっても過言でない。
 あるいは医療現場に手厚い支援をするべきだった。感染力の強いデルタ株が猛威を振るった今年7、8月の約2カ月間で、入院できず自宅で亡くなった人は45人いた。
 本来なら助かった命を救えなかった可能性がある。専門家らが「必ず来る」という第6波への備えとして、病床や医療人材の確保は、待ったなしだ。共同通信の試算では国の医療強化方針に基づくと、16都道府県で病床が不足するという。再び流行の波が来れば医療崩壊は現実となる。
 これらの反省を踏まえ、雇用や医療など社会基盤にコロナ対策費を振り向けるべきだ。検査院の指摘を政府は真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。
 同時に再委託が繰り返された持続化給付金事業など不透明な契約にも検査院は切り込んでいる。電通や関連法人と契約に至った経緯や、再委託の詳細など記録が不十分だ。
 公金を取り扱うのに「公平な競争が阻害されていると疑念」(検査院報告)を持たれてはならない。
 無駄遣いでなく国民のための予算執行ができるのか、国民が注視していることを首相は肝に銘ずるべきだ。