<社説>普天間つり下げ訓練 即時運用停止しかない


社会
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 米軍の県民無視はどこまでエスカレートするのか。

 米軍普天間飛行場で同飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイによる異例のつり下げ訓練が9日、18日と行われた。市街地に囲まれた基地でこれ以上、危険な訓練が実施されるのは看過できない。改めて普天間飛行場の即時運用停止、撤去を求める。
 18日は、滑走路中央でホバリングして物体を機体まで引き上げる訓練を9回行った。低空でのホバリングは、周辺を長時間爆音にさらした。傍若無人な米軍に、住民の恐怖と怒りは募るばかりだ。
 7月には海兵隊ヘリがつり下げ輸送していた鉄製コンテナを渡名喜村沖に落下させた。昨年2月には鉄製の訓練用標的を読谷村沖で落下させた。1965年に読谷村の民家近くに落下したトレーラーの下敷きになって小5女児が亡くなった悲劇を、県民は常に思い起こさざるを得ない。
 米国が「世界一危険な飛行場」と認める普天間飛行場の危険性は、2004年の沖縄国際大学へのヘリ墜落のように、発着に伴うものだけではない。17年には、緑ヶ丘保育園への米軍ヘリの部品落下、普天間第二小学校グラウンドへの窓枠の落下と、大惨事になりかねない事件が相次いだ。基地由来と考えられる有機フッ素化合物(PFAS)による周辺の河川や地下水の汚染も明らかになった。普天間飛行場の基地被害は枚挙にいとまがない。住民の我慢はとっくに限界を超えている。
 中国の海洋進出を背景に米軍は新たな戦略構想を導入し、離島に拠点を設ける訓練などを行っている。それが危険性を高めてはいないか。
 驚くべきは日本政府の不作為だ。沖縄基地負担軽減担当相を兼務する松野博一官房長官は、6日に宜野湾市民と「車座対話」をしている。ところが18日の定例会見で、市街地に近い同飛行場で訓練を実施する妥当性を問われ、直接の答弁を避けた。責任を果たさない担当相は不要だ。
 危険性除去の唯一の方策と称して政府は名護市辺野古に新基地を建設している。しかし軟弱地盤があり、政府試算でも完成まで12年以上かかるという。19年の県民投票で示された通り、県民は新基地反対が多数だ。計画は破綻しているにもかかわらず、新基地にこだわり目の前にある危険をこれ以上放置することは許されない。
 19日に普天間飛行場所属のオスプレイ3機が那覇軍港に着陸し、船に積み込まれた。日米地位協定に基づく日米合意(5・15メモ)では、那覇軍港の使用主目的は「港湾施設及び貯油所」としか記していない。高層ビルが林立する那覇市中心部でのオスプレイ着陸は危険極まりない。米軍はどこまでやりたい放題なのか。
 基地の危険性除去のためには、日米地位協定は抜本的な見直しが不可欠である。政府は真摯(しんし)に地位協定改定に取り組むべきだ。