<社説>独が核禁止会議参加 日本も共に行動すべきだ


社会
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 新政権を発足させるドイツの社会民主党(SPD)など3党は、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を政策合意書に盛り込んだ。

 「核なき世界」を目指す意思を鮮明にしたドイツの決断を歓迎する。「唯一の戦争被爆国」として核廃絶を提唱しながら、核兵器を違法化する枠組みに背を向け続ける日本の態度とは対照的だ。
 日本もオブザーバー参加してドイツと共に核兵器廃絶へ向け重要な一歩を踏み出し、最終的には核禁止条約に署名、批准すべきだ。
 核禁止条約は核保有や使用などを全面的に違法化している。第1回締約国会議は来年3月、ウィーンで開かれる予定だ。ドイツ新政権は、国際的な軍縮進展に向け「指導的な役割」を果たし「核なきドイツ」を目指す。
 北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではノルウェーに次ぎ2カ国目。欧州の大国ドイツの方針転換により他の加盟国が追随する可能性が指摘されている。
 一方、被爆地広島選出の岸田文雄政権は慎重な姿勢を崩さない。ドイツのオブザーバー参加意向を受け、松野博一官房長官は「オブザーバー参加よりも、唯一の戦争被爆国として核兵器国を核軍縮に一層関与させるよう努力しなければならない」と従来の立場を繰り返した。
 国連総会の委員会は10月、日本が提出した核兵器廃絶決議案を賛成多数で採択した。だが「核の傘」を提供する米国への配慮から、核の保有や使用を全面禁止する核兵器禁止条約への言及は避けた。日本は核保有国と非保有国の橋渡し役を自任するが、この対応は生ぬるい。
 世論の動向は明白だ。日本世論調査会が実施した全国世論調査(6~7月実施)で、核兵器禁止条約に日本が「参加するべきだ」と答えた人が71%に上った。第1回締約国会議にオブザーバーとして「出席するべきだ」とした人は85%だ。
 日本の「核の傘」はかつて沖縄を犠牲にして成立していた。60年前の1961年6月、池田勇人首相とケネディ米大統領が会談した。池田首相は、米国の核兵器が日本国内に持ち込まれることに反対があるため、核基地として米国が沖縄を統治することの必要性を認めた。池田氏は岸田氏が会長を務める派閥・宏池会を創設した人物である。岸田氏の姿勢が問われる。
 ピーク時に約1300発の核兵器が沖縄に配備され、核ミサイルの誤射も発生している。72年の沖縄返還でいったん核は撤去されたが、有事の際に核兵器を沖縄に再持ち込みする密約が結ばれた。
 核禁止条約は被爆者らの長年の訴えが実を結んだ成果でもある。条約は前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記し、核兵器の非人道性を指摘している。今こそ核抑止力に頼らない世界を目指すべきだ。