<社説>SACO合意25年 負担軽減策の再検討を


社会
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 米軍普天間飛行場の全面返還を含む県内米軍基地11施設の返還などに合意した日米特別行動委員会(SACO)の最終報告から、25年がたった。11施設のうち現在までに返還されたのは6施設で、普天間飛行場をはじめ5施設はいまだ実現していない。

 25年を経ても返還が進まない理由は明白だ。県内での代替施設建設や機能移転が返還の条件となっており、基地の整理縮小につながらないためだ。国土面積の0・6%にすぎない沖縄に米軍専用施設の70%が集中する過重負担は、県内移設で解決できるはずがない。SACO合意を見直し、新たな沖縄の負担軽減策を議論することが急務だ。
 SACOで沖縄の基地負担軽減をうたいながら、米軍の機能を損なうことなく、むしろ基地の機能強化や近代化が図られてきたのがこの25年の実態といえる。
 SACO合意した11施設の返還面積計5002ヘクタールのうち、現在までの返還済み面積は4411ヘクタールとなっている。これは計画の過半を占める北部訓練場3987ヘクタールの部分返還によるところが大きい。だが、返還の条件として6カ所のヘリパッド(発着帯)が北部訓練場の残る区域に新設された。訓練は過密化し、MV22オスプレイの離着陸が可能になるなど機能も強化された。米軍機の飛行が頻繁になることで、周辺集落では騒音被害や事故の危険性といった住民負担が増している。
 読谷補助飛行場で行われていたパラシュート降下訓練を移転した伊江島補助飛行場でも、近年の訓練激化は深刻だ。最新鋭ステルス戦闘機F35B用の離着陸場が整備されるなど、訓練の集約、機能強化が進んでいる。
 負担軽減の目玉であった普天間飛行場の全面返還は、SACO合意から5~7年という目標だった。だが、どんなに時間をかけようとも、本島北部の海を埋め立てて代替基地を造るという条件を県民が受け入れるはずはなく、県内移設では解決にならないことが明らかになっている。埋め立て予定地に広がる軟弱地盤という土木技術的な問題もあり、辺野古移設による普天間返還計画は破綻している。
 2019年2月の県民投票で、辺野古新基地建設に伴う埋め立てに反対する人が投票者の72%に上り、沖縄の民意は揺るぎないものとなった。普天間飛行場の1日も早い危険除去をはじめ、沖縄の負担軽減について新たな方策を検討する時期だ。日本全体の安全保障のために米軍の駐留が必要というならば、負担の在り方を全国民の問題として議論しなければならない。
 玉城デニー知事はSACO合意以降の基地整理縮小の検討や、さらなる負担軽減を目的に「SACWO(サコワ)」の設置を求めている。合意した計画を実効性あるものにするためにも、日米両政府に沖縄側の代表も加えた協議の場が不可欠だ。