<社説>沖縄公庫、存続へ 自立経済確立まで必要だ


社会
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 沖縄振興開発金融公庫(沖縄公庫)について、政府は2022年度以降も存続する方針を固めた。沖縄公庫は沖縄振興を金融面から支える政策金融機関である。継続するとした政府の判断を評価したい。

 1972年の沖縄施政権返還から半世紀たつが、沖縄経済は自立したと言い難い。自立経済の確立へ向け、沖縄公庫の存在は不可欠である。
 沖縄振興特別措置法(沖振法)と同様に、沖縄公庫の設置根拠となる法令の期限も5年か10年か不透明だ。だが、少なくとも存続が決まったこの5~10年の期間に、自立経済への道筋を付けるべく沖縄公庫の役割、意義を県、国、民間で改めて議論すべきだ。
 沖縄公庫は沖縄振興政策の下、リゾート開発、情報通信産業、国際物流機能の振興など金融面で政策実現を支えてきた。近年はコロナ禍で資金繰りに窮する事業者への融資などセーフティーネットとしての役割も重要性が増す。
 2019年度末の沖縄公庫の融資残高は8641億円あり、県内民間金融機関を含めた総融資額の15%を占める。
 民間の融資を補完するだけでなく、ハイリスクの分野、社会基盤整備にも融資している点が特徴に挙げられる。
 ハイリスクとはまだ産業として確立していない起業者、創業者への融資を含む。将来性の見極めなど民間金融機関としても二の足を踏む分野だが、沖縄公庫を含めた協調融資によって金融機関もリスクを分散でき、企業も事業の本格化へ道筋を付けられる。
 最近でも琉球銀行と協調した創薬ベンチャーへの融資、生分解性プラスチック開発企業への融資があった。
 こうした次代を担う沖縄発ベンチャーをいかに育てられるかが沖縄の自立経済確立を左右するであろう。
 沖振法の延長が決まったのは、沖縄振興が道半ばということも示している。当然、沖縄経済も自立へ向けて、今後ますます沖縄発の創業・起業が活発になるだろう。民間では支えきれない資金需要を賄う政策金融機関として、沖縄公庫の存在はより重要だ。
 同時に沖縄公庫本来の役割である長期的な振興も忘れてはならない。
 玉城デニー知事は今年2月の県政運営方針で在沖米軍基地に関し「在日米軍専用施設面積の50%以下を目指す」と表明した。
 実現可能性はともかく、将来的に大規模な米軍基地返還があった場合、開発費、基地従業員の雇用保障など巨額の返還関連費用が求められる。
 10年以上の長期計画が必要であれば、沖縄振興の「車の両輪」である沖縄公庫が先導的役割を担わねばならない。
 コロナ禍で露呈したのは外的要因に左右される観光産業の脆弱(ぜいじゃく)さだ。そうした県内経済のセーフティーネットに加え、民間が難しいハイリスク分野への融資、長期的な沖縄振興への関与といった沖縄公庫の役割を問い直したい。