<社説>コロナ「第6波」 教訓生かし対策徹底を


社会
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 新型コロナウイルスの感染が急拡大している。県は5日、県内の感染者が623人だったと発表した。先週水曜日に比べ23倍である。

 玉城デニー知事は4日に「もはや第6波に突入した」と述べ、6日に新型コロナ特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置(重点措置)」適用を政府に要請する。感染拡大を食い止めるため、第5波の教訓を生かし、県民一人一人が対策を徹底しなければならない。
 コロナ対応には、水際対策の徹底、無料のPCR検査の早期実施、ワクチン接種の推進、医療提供体制の確保が欠かせない。
 このうち、水際対策は県民だけでなく米軍の対応が不可欠だ。今回の感染拡大は、米軍基地が水際対策の穴となっていることが浮き彫りとなった。昨年12月のキャンプ・ハンセンでのクラスター発生の際、米国からの出国時にPCR検査を実施していなかった。キャンプ・ハンセンに限らず、全ての在日米軍施設の米兵らに対し、出入国時のコロナ検査を免除していた。
 外務省によると、在日米軍が昨年12月30日以降、24時間以内の検査実施を決定したと通知したという。
 だが米軍任せでいいのか。在韓米軍は隔離終了時の検査を韓国側が実施している。在日米軍に対して日本側で検査を実施すべきだ。さらに基地からの外出を制限し、外出する場合はPCR検査の陰性証明を義務化するなど米軍に求めるべきだ。
 感染症対策が米軍任せとなる背景には、米軍の特権的な地位を定めた日米地位協定の壁がある。日本政府関係者は「中国との対立が深まる中、米国の機嫌を損ねる(地位協定)見直しは持ち出せない」と言う。国民の命を守るのが国の責務であり、本末転倒である。
 政府は、オミクロン株の市中感染などが確認された東京、大阪、京都、沖縄の4都府県で、希望者への無料検査を実施する方針を示している。ただちに実施してもらいたい。同時に、水際対策として、来県者への事前PCR検査の義務化を実現してほしい。
 沖縄県はワクチン接種率に全国と差がある。若年層の接種遅れを改善する必要がある。新変異株「オミクロン株」は、3回接種を受けた人にも感染する事例があるが、接種者は重症化しにくいと指摘されている。3回目接種の前倒しも必要だろう。
 第5波で県内の医療体制が崩壊状態に陥り在宅療養中に死亡する事案が起き、家庭内感染の数が跳ね上がる事態もあった。
 岸田文雄首相は感染が急拡大する地域では、陽性者全員を入院させ全ての濃厚接触者を宿泊施設待機とする現行の措置を見直すと表明した。その前に医療体制の整備や療養施設の拡充、保健所の体制強化など、第5波の教訓を生かすべきではないか。