<社説>米軍のコロナ対策 やはり基地封鎖しかない


社会
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 林芳正外相が6日、ブリンケン米国務長官と電話会談を行い、ようやく在日米軍基地の新型コロナ対策強化を求めた。在日米軍司令部は同日、基地外でのマスク着用義務化などの対策を取る姿勢を示した。玉城デニー知事がキャンプ・ハンセンからの外出禁止などを求めた昨年12月21日から実に16日目だ。ハンセン所属兵士の飲酒運転が相次いで摘発されたことなどからして、米軍には期待できない。やはり、基地からの外出を禁止するしかない。
 キャンプ・ハンセンで大規模クラスターが発生し、その後、同基地の基地従業員が県内最初のオミクロン株確認事例となった。その後、県内の他の基地でも同様の事例が次々に見つかった。玉城知事は県内のオミクロン株は米軍基地由来であると断定し、基地からの「染み出し」が続いていると批判してきた。筑波大客員教授の徳田安春氏は「今回の感染急拡大で引き金になったのは、明らかに米軍基地だ」とした上で「軍隊としては感染情報を他国に知られたくない事情があるのだろうが、それなら外出を禁止するしかない」と述べている。
 県外の米軍基地も同様だ。沖縄県と同時にまん延防止等重点措置が適用される山口県の村岡嗣政知事は、同県岩国市での感染拡大は米軍が原因だと指摘した。厚生労働省専門家組織の脇田隆字座長も、沖縄、山口、広島3県の感染拡大は米軍基地と「何らかの関連の可能性はあるだろう」との見方を示している。
 今後の感染症対策のためにも、検疫法を米軍関係者にも適用できるよう日米地位協定を見直す必要がある。全国知事会は緊急要請に盛り込んだが、岸田文雄首相は「(現時点で)感染ルートを断定するのは難しい」と述べ、地位協定の見直しも否定した。
 韓国では、米軍関係者の入国後の隔離終了時に韓国側が検査を実施している。沖縄県が日本側による検査を求めたが、米軍は拒否した。基地には日本人従業員なども出入りし、基地外に住む米軍関係者もいる。基地からの外出規制は、陰性証明のチェックなどを日本側が実施しなければ実効性は確保できない。
 オミクロン株対策で取った日本政府の検疫体制に対して厳しすぎるという批判もあったが、米軍基地については米軍任せだ。駐留国の国民の安全を顧みない「穴の開いたバケツ」と揶揄(やゆ)される米軍基地では、兵士の感染防止もできず、軍隊の即応性自体、維持できないのではないか。
 今後のゲノム解析などで、今回の全国の爆発的感染拡大の原因が米軍基地だったと解明されれば、政府はその責を負わなければならない。政府はまず、当面の外出禁止措置を取らせた上で、地位協定の見直しに着手すべきだ。
 感染症の基地リスクは、基地周辺にとどまらず日本全体に及ぶ。地位協定見直しは日本全体の問題である。