<社説>コロナ急拡大で混乱 基本に立ち返り予防策を


社会
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 県内で新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が止まらない。感染力が非常に強いオミクロン株の感染者数の急増が背景にある。医療や行政、学校などの現場では混乱が広がっている。

 より深刻な課題は医療や検査体制の十分な確保だ。医療スタッフに感染が広がり、また外来を停止する病院が相次いでいる。救急部門を一部停止した病院もある。PCR検査については希望者が殺到し業務が追い付かず時間を要し感染が広がりやすい事態が起きている。
 緊急事態宣言解除後、飲食店への酒類提供や休業、時短などの制限が解かれ、コロナ以前の日常に近づいたことで県民の多くは気が緩んだかもしれない。しかしこの差し迫った危機を回避するには、手洗いや消毒、密を避けるなど基本的な感染予防に徹するほかない。一人一人の心掛けが重要だ。
 医療の現場では、コロナ用に確保できる予定の病床使用率はまだ100%に達していないものの、感染者数が増えるに従って重症者も増えることが予想される。現段階では感染者の大半が若年層だ。問題は感染者との接触により、高齢者や疾患を持つ人など重症化リスクが高い人々に感染が広がった場合の対応である。その準備が急務だ。
 しかし重点医療機関では、ワクチン接種者が感染する、いわゆるブレークスルー感染も相次ぎ、437人(8日時点)の医療従事者が欠勤しているという。県はコロナ専用病床を648床確保しており、一般診療を制限する場合は1031床まで増床することを想定するが、病床を確保しても医療従事者の欠勤により運用できない恐れがある。
 沖縄は島しょ県であるため、他県から医療従事者の応援を求めにくい特殊事情がある。医療がすぐに逼迫(ひっぱく)してしまう離島では一層深刻である。政府はこの特殊性に考慮し、他県からの応援態勢構築を早急に検討するべきだ。
 一方、PCR検査はパンク状態にある。このままだと効果的な予防や早期治療につなげられない。コロナ対策の肝はPCR検査である。パンクしたままだと感染の封じ込めどころか、穴だらけになる。水際対策もままならない。
 検査体制のさらなる拡充が必要だが、対策は急を要する。まずは政府や県、市町村が協力し合い、緊急措置として抗原検査キットの無償配布をさらに拡大し、配布数を増やすべきだ。医療従事者、高齢者への3回目のワクチン接種をさらに急ぐ必要もある。
 感染者数がこのまま高止まりすれば、まん延防止等重点措置からさらに制限の強い緊急事態宣言への移行が現実味を帯びてくる。しかし政府は県民の行動を制限するのならその前に、感染が広がり由来となった米軍に外出禁止を確約させるべきだ。米軍への水際対策は政府の責務であることを繰り返し強調したい。