<社説>新成人に贈る 自ら決める大人になろう


社会
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 新成人を迎え、改めて大人への一歩を踏み出した皆さん、おめでとう。新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るう中、一部の自治体では成人式が中止となった。必ずしも喜びばかりではないが、人生の新たな船出を祝う。そして、この節目に「大人になる」ことを共に考えよう。

 「大人」とは何だろう。広辞苑によると「十分に成長した人」「考え方・態度が老成しているさま。分別のあるさま」とある。身体の成長だけでなく、精神的成長を伴うものだ。経験、知識によって自ら進むべき道を示せるのが「大人」の条件といえそうだ。
 2022年は「大人」になる節目が新たに加わる。4月1日施行の改正民法により、成人年齢が18歳に引き下げられるからだ。
 本紙新年号に掲載した「高校生が考える18歳成人」特集で、岡山の高校生は「年齢を重ねれば誰でも大人として扱われるが、自己管理できる人こそ本当の大人だと思う」と語っている。
 18~20歳の若者にとって、自ら人生の選択を迫られる機会は少ないだろう。だが「大人」になることは、選択する責任を伴うものでもある。
 例えば選挙を考えてみよう。今年は秋の県知事選を頂点に18の首長選挙、30の議会議員選挙がある。それぞれの住むまちで暮らしがどうすれば良くなるか、まちの課題をどう解決するか、選挙は重要な意思表示の機会になる。
 総務省がまとめた年代別投票率を見ると、2017年の総選挙で10代は40%、20代は33%で全体の53%からすると、極端に低い。
 選挙に行っても何も変わらないと諦めるか、自らの選択でよりよい暮らしを目指すか。「自ら決めた」ことには結果に対しても責任を負う。ただ諦めたにしても社会参加の機会を放棄したことになり、結果への責任を免れるわけではない。新成人の皆さんはどちらを選ぶだろうか。
 今年20歳となる若者の多くが新世紀となった2001年の生まれだ。90年代半ばから2010年代生まれを指す「Z世代」と呼ばれる人たちでもある。デジタル機器や通信網が発展し、ウェブを活用した情報収集が得意ともいわれる世代に当たる。
 そうした情報収集力を最大限に生かせれば、選択する幅も広がるだろう。自らの持つ強みを生かし、社会へ発信することを期待したい。
 さらに今年は日本復帰50年という沖縄にとって大きな節目の年でもある。「大人」としての自覚を持った若者たちが、政治、社会、経済、多くの分野で自ら進むべき道を示してほしい。若い力が集まれば、沖縄全体の発展にもつながっていく。
 先が見通せないコロナ禍で希望を持ちにくい時代ではある。だがそれでも諦めず若者には自らの決断に自信を持ってほしい。それを支える「大人」が周りにいるはずだ。