<社説>日米2プラス2 有事作戦は認められない


社会
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 岸田内閣初の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれた。共同発表は、南西諸島での自衛隊強化と日米の施設共同使用増加を盛り込んだ。そして緊急事態を想定した日米の共同計画作業が「進展」したことを歓迎した。

 地域は明示していないが、緊急事態には台湾海峡有事も含まれるとみるのが自然だろう。2プラス2の前に、台湾有事に備えて南西諸島を日米が拠点とする共同作戦計画の原案策定が報じられた。今回の共同発表は、共同作戦計画の存在を認めたことになる。
 専守防衛を原則とする日本が、台湾有事を前提とした軍事作戦計画を検討することは憲法に抵触する。住民を戦闘に巻き込むリスクが飛躍的に高まる。県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦のように、南西諸島一帯が戦場となりかねない計画は決して容認できない。
 そもそも国会で審議しないまま、有事の作戦計画策定を容認した。シビリアン・コントロール(文民統制)は機能不全に陥っている。
 2プラス2は、東シナ海での中国の活動に懸念を示し、共同発表は「地域の安定を損なう行動を抑止し、必要であれば対処する」とした。昨年3月の前回文書では「反対」としていた表現を、「抑止」へと踏み込んだ。
 抑止の一環として日本は「ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意」を示した。敵基地攻撃能力の保有検討の表明と言える。専守防衛の原則の逸脱でありながら、十分な国会審議を経ていない。
 さらに共同発表は「緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎」した。緊急事態は台湾海峡、尖閣、南シナ海、東シナ海などの有事を指すとみられる。新たな共同作戦計画策定が進んでいることを認めたのである。計画を念頭に2プラス2は「南西諸島での自衛隊の態勢を強化し、日米の施設の共同使用を増加させる」ことで一致した。
 県内では与那国島、宮古島に次いで、年内には石垣島にも自衛隊が配備される。陸上自衛隊ミサイル部隊の配備を念頭に、米軍も自衛隊施設の共同使用を想定しているとみられる。
 今後、南西諸島で日米の軍事一体化による共同訓練の増加が予想される。有事に備え、港湾などの民間施設が使用される可能性がある。県が訴えてきた基地の負担軽減に逆行する事態である。
 2プラス2は、軍事偏重が際立つ。日本政府には、外交や経済協力などを通じて緊張緩和や対話を促進しようという努力が感じられない。軍事的な抑止力だけでは、アジアの平和と安定は得られないだろう。日本が戦後国際社会に約束した平和主義を形骸化させてはならない。今こそ外交力を磨かなければならない。