<社説>核保有5カ国声明 核廃絶実現への契機に

 米中ロ英仏の核保有五大国が3日、「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」とうたう共同声明を発表した。5カ国が核兵器の問題で声明を発表するのは初めてである。具体的行動が示されていないことに批判があるものの、1985年のレーガン米大統領とゴルバチョフソ連共産党書記長の声明を今、5カ国で確認した意義は大きい。

 日本政府は核兵器禁止条約に後ろ向きで、バイデン米政権が検討している核先制不使用宣言にも反対している。今回の共同声明を、政府は政策の方向転換の契機とし、核廃絶の実現に向けて一歩ずつ進めていくべきである。
 共同声明に対し国連のグテレス事務総長は「今後の取り組みに関する詳細を期待している」と歓迎し、「核を巡る全てのリスクを排除する唯一の方法は、全ての核兵器を廃絶することだ」と強調した。松井一実広島市長も、歓迎しつつ「具体的行動につなげてほしい」と求めた。
 なぜ今、共同声明だったのか。延期されたが、4日に開幕予定だった核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて準備されたという。3月の核兵器禁止条約締約国会議も念頭にあったようだ。1年前の同条約発効は、核軍縮が進まないことへの非保有国の不満、批判が背景にある。共同声明は非保有国をけん制し、5カ国にのみ核保有を認めるNPT体制を堅持して核管理の主導権を握り続ける狙いだと見ていいだろう。
 実際、米中ロは核兵器の小型化や高性能化を進めており、核戦争の危機感はむしろ高まっている。共同声明に対し核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のフィン事務局長は「現実には全く逆のことをしている」と批判した。核戦争までの時間を示す「終末時計」は2020年1月以来、史上最短の100秒のままだ。5カ国は国連安全保障理事会(安保理)常任理事国でもある。5カ国が利害を主張し合うため、安保理は続発する紛争や人道危機に対し機能停止状態に陥っている。
 声明は、核兵器の目的は「防衛、侵略の抑止、戦争防止」に限り、「5カ国の核兵器はいかなる国も標的にしていない」と述べている。先制使用も核による報復もしないが、抑止力としては必要だというのだ。だが、膨大な数の核兵器が配備されている現状は、偶発的な核使用のリスクを排除できない。
 日本政府は、保有国と非保有国の橋渡しをすると言いながら、何ら実効性のある外交をしていない。昨年12月、国連総会で日本が提出した核兵器廃絶決議が28年連続で採択された。そして核兵器禁止条約発効を歓迎する決議には反対した。これは、米国の「核の傘」の下で日米軍事一体化を進めているが故の矛盾であり、核廃絶に逆行している。「核兵器のない世界」実現へ国民的議論が必要だ。



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