<社説>名護、南城市長選告示 将来託す1票見極めよう


社会
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 名護市長選と南城市長選が16日、告示される。今年は7市11町村で首長選挙、30市町村で議会議員選挙が実施される統一地方選のほか、夏には参院選、秋は知事選が実施される選挙の年だ。名護、南城の両市長選はその火ぶたを切る選挙である。

 両市長選はいずれも、政権与党の自民・公明が推薦する候補者と、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」勢力が推す候補者による事実上の一騎打ちになる見通しだ。選挙結果は、その後に連なる選挙に大きく影響する。
 有権者は候補者の論戦を慎重に見極め、1票を投じてほしい。沖縄の将来を大きく左右する貴重な1票となる。
 名護市長選は、米軍普天間飛行場の移設に伴う同市辺野古の新基地建設の是非が大きな争点だ。日米政府が辺野古を移設先に決めて以来、名護市をはじめ国政や県政、関係自治体でも大きな争点になってきた。
 今回の名護市長選は、2018年に大浦湾の軟弱地盤の存在が明確になってから初めての市長選となる。また19年の県民投票で投票者の約7割が辺野古埋め立てに反対の意思を示して以降、初の市長選でもある。今回の市長選で改めて地元の民意が示されることになる。そのため全県だけでなく、国内外に注目される重要な選挙だ。
 ただ新型コロナウイルスが猛威を振るう中での選挙戦でもあり、緊急の課題であるコロナ対策も重要な争点となるだろう。
 辺野古新基地問題は重要局面にある。軟弱地盤が見つかり改良工事が必要なため国の試算では、完成までに12年、工費は約9300億円に上る。改良に必要な国の設計変更を県が不承認としたことで国と県の対立は新たな段階だ。選挙では建設の是非だけでなく、これらの動きを有権者がどう評価するかも焦点だ。
 この問題を巡る立候補予定者2人の見解の違いは明確だ。自公勢力が支える現職の渡具知武豊氏は「国と県の係争が決着を見るまではこれを見守るほかないとの立場に変わりない」と述べ、是非に言及しない構え。対する新人で「オール沖縄」勢の岸本洋平氏は「名護市でも県民投票で反対の民意が示された。軟弱地盤で完成の見通しも立っていない」として建設中止を訴えている。
 選挙戦では、コロナ対策や地域振興、子育て・教育、などの政策も問われる。
 一方、南城市長選では、「オール沖縄」が支持する現職の瑞慶覧長敏氏と、自公の支持を受け返り咲きを狙う古謝景春氏が対決する。
 いずれの選挙でもコロナ対策で選挙活動が制限される面があるだろう。とはいえ、民主主義の根幹は選挙である。有権者は沖縄の将来を決める大切な1票であることを自覚し、立候補者が発信する政策をよく吟味して投票に足を運んでほしい。