<社説>通常国会召集 「言論の府」の復権望む


社会
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 通常国会がきょう召集される。安倍政権以来、国会で虚偽答弁や説明を尽くさない政府側の姿勢が目立ち、政治不信が増幅した。

 国会は外交・防衛はもとより、国民の社会生活や経済活動を守るため、政権の施策などを監視する役割が欠かせない。「言論の府」としての本来の姿を取り戻し、活発な政策論争をしてもらいたい。
 まず外務・防衛に関しては、今月開催された外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、台湾有事に備えて南西諸島を日米が拠点とする共同作戦計画の存在を事実上認めた。
 専守防衛を原則とする日本が、台湾有事を前提とした軍事作戦計画を検討することは憲法に抵触する。国会で審議しないまま、有事の作戦計画策定を容認したことは三権分立の原則を逸脱している。シビリアン・コントロール(文民統制)を機能不全に陥らせた。今国会で徹底的に論議してもらいたい。
 岸田政権は小手先の対応が目立つ。今国会は感染が急拡大する新型コロナウイルス「オミクロン株」への対応が最大の争点となる。だが政府は病床確保のため国や自治体の権限を強化する感染症法改正案の提出を見送った。参院選を控え、国会論戦の争点となるのを避けるためだ。「愚策」と批判された布製の「アベノマスク」が大量に保管され巨額の費用がかかっていると批判されると責任をあいまいにしたまま廃棄を決めた。
 コロナ禍の経済対策として、18歳以下への10万円給付を打ち出した。しかし、現金とクーポン券の併用を批判されると、全額現金支給を容認した。政治は規定方針に固執しない柔軟さは必要だが、思いつきの政策を、世論に合わせて修正するのは朝令暮改のそしりを免れない。
 過去の「負の遺産」の先送り姿勢も目立つ。安倍政権時代に発覚した森友学園問題に関する決裁文書改ざん問題で、改ざんを命じられ自殺した遺族が起こした訴訟は、賠償請求を全面的に受け入れて幕引きした。遺族が求めた真相究明の機会を奪った。参院選を夏に控え世論の批判を浴びているこの問題を早期終結させたいとの思惑があると指摘されている。本末転倒である。
 安倍元首相の対応が問題視された「桜を見る会」については、岸田首相自身が主催して開くことはないと表明。問題を棚上げにした。
 日本学術会議が推薦した会員候補を菅義偉前首相が任命拒否した問題について岸田首相は「一連の手続きは終了したものと承知している。もう結論は出ている」と語った。学問の自由の侵害に向き合わない無責任な態度だ。
 一連の岸田首相の政権運営に対し、国民から負託を受けた国会議員は、真っ向から論戦を挑んでもらいたい。その姿勢を貫くことこそ、政治を国民の手に取り戻すことにつながるはずだ。