<社説>子育て給付金変更 公平な支援に手を尽くせ


社会
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 政府は、18歳以下の子どもへの10万円相当給付の制度をまたもや変更する。離婚後に子どもを実際に育てているひとり親世帯に給付金が届かない事例があるためだ。ひとり親の当事者からの申請を自治体が受ければ、二重給付を容認する。

 これまで政府は、両親間で話し合って対応することを求めていたが困難なケースがある。この給付金を巡っては、現金とクーポンに分けて給付する原則を現金一括給付容認へ変更するなど二転三転した経緯がある。
 新型コロナ禍で苦しむ子育て世帯を迅速に救済しようと実施に踏み切ったものの、不備が目に余る。制度設計当初からもっと丁寧に検討すべきだった。目的を果たすためには、どの子育て家庭にも行き渡るよう手を尽くすべきだ。
 この制度は岸田文雄首相の肝いりだ。経済対策の柱の一つで、昨年12月の補正予算に盛り込まれた。迅速な支給を狙い、既存の児童手当の仕組みを利用。原則として昨年9月時点で自治体に登録している口座に振り込まれる。父親が口座登録者の場合、離婚後に子どもを養育するのが母親であっても、受け取りは父親になってしまう。
 ひとり親支援協会が昨年12月からホームページ上でアンケートを実施したところ、全国で58人が受け取れず「11月末に離婚し、相手の口座に入金されて受け取れない」「離婚した元夫から給付金を渡してもらえない」などと回答した。多くは9月以降に離婚したシングルマザーだった。同協会は離婚原因がドメスティックバイオレンス(DV)の場合、「泣き寝入りになる」と述べ、救済を訴えた。
 立憲民主党による推計によると給付金を受け取れないひとり親世帯の子どもは全国約4万人に上る。
 離婚、ひとり親世帯、DVの割合がいずれも全国最高水準にある沖縄にとって、より深刻な問題だ。しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄が2020年に実施した県内ひとり親調査では、回答者の約6割が非正規雇用で、約9割が低所得者対象の児童扶養手当を受けていた。県内は給付金へのニーズはより高いといえる。
 問題を重くみて独自の給付を始めた自治体もある。沖縄市は、給付金を元配偶者から受け取っていない監護親を対象に10万円を支給する。市によると対象児童は120人程度を見込む。
 政府はこれまでも自治体判断で給付を認めていたが、新型コロナ対策の地方創生臨時交付金の活用などを前提としていた。今回の変更で全額国費で給付する方針に転換した。当初から自治体への配慮も足りない。ただでさえ事業者への協力金で逼迫(ひっぱく)している沖縄県のような自治体には酷な話である。
 コロナ禍で困窮する人々への支援策を講じる際、政府はもっと当事者目線で想像力を働かせてほしい。