<社説>消えゆく戦争遺跡 世界遺産視野に保存急げ

 沖縄戦を追体験できる平和学習の場として、大切な役割を果たしているガマや壕の劣化が進み、立ち入り禁止が相次いでいる。

 戦争を体験した世代が全人口の1割に満たなくなった今、戦争の記憶をいかにして継承するかが問われている。地域に残された戦争遺跡は、体験者と将来の世代をつなぐ優れた教育の場である。
 「負の遺産」として将来は世界文化遺産登録を視野に、まずは戦争遺跡の文化財指定を含め、保存・活用へ向けた取り組みを急ぐべきだ。
 防衛隊や鉄血勤皇隊、女子学徒として戦場に動員された90歳以上の世代は県人口の1.4%。小学生だった80歳以上を含めても7%にすぎない(2020年「住民基本台帳年齢別人口」)。体験者から証言を聞くことがますます難しくなった。
 そこで注目されているのが地下のガマや壕などの戦争遺跡である。中へ入って体験者の証言を聞いたり、証言記録を確認したりすることで77年前の出来事を追体験できる。想像力を働かせることで理解を深めることができる。
 1996年に広島の原爆ドームが国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されたことを契機に、全国で戦争遺跡の保存・活用の機運が高まった。95年には、国の文化財指定の基準が改定され、戦争遺跡を含む近代の遺跡も指定対象となった。
 県立埋蔵文化財センターは、全市町村で1076件の戦争遺跡を特定した。県教育委員会文化財課によると、県内の13市町村が26件の戦争遺跡を文化財指定している(2022年1月現在)。埋蔵文化財センターが把握した総数の2%にすぎない。
 しかも、農地改良や宅地造成などによって破壊されたり、事故防止の観点から自治体が立ち入りを禁止したりする場所が相次いでいるという。那覇市まちなみ整備課によると、17年度時点で市内には92カ所の地下壕が残っていた。市はこのうち16カ所を「危険」と判断。13カ所を埋め戻し、3カ所の入り口にフェンスを設置した。
 このまま手をこまねいていると、戦争の記憶を伝える戦争遺跡を失うことになってしまう。資料価値の高い戦争遺跡を文化財指定することによって開発から保護し、活用につなげてもらいたい。
 沖縄戦研究者で沖縄国際大元教授の吉浜忍氏は、第32軍司令部壕を中核として、沖縄の戦争遺跡群を世界文化遺産登録する取り組みを提案している。「20万人余の犠牲を出した地上戦闘で、世界史の戦争をみても例がない」という。
 首里城跡などを含む9遺産は「琉球王国のグスク及び関連遺産群」としてユネスコ世界遺産に登録された。戦争遺跡も世界遺産登録することで、沖縄の地で琉球の歴史文化だけでなく、沖縄戦の教訓を学び、継承し、平和を発信することができるはずである。



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