<社説>子の貧困対策計画案 親の経済自立後押しを


社会
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 県子どもの貧困対策推進会議(議長・玉城デニー知事)は2日、新たな子ども貧困対策計画の素案を決定した。子の貧困は親の経済力の問題に直結する。

 貧困の連鎖を解消するには、支援を必要とする子どもはもちろん、家庭全体に対する視点も欠かせない。企業の賃上げを通じた所得の向上、男女間に横たわる賃金格差の解消、若くに出産した女性の育児・就労サポートなど、経済自立の後押しが必要だ。
 計画は2022~26年度に展開する取り組みの方向性を示し、従来計画では把握できなかった「ヤングケアラー」の実態調査など165項目の施策を盛り込んでいる。
 中でも重視すべきなのが、ひとり親世帯の支援だ。計画策定に向けた最新調査で、0~17歳の子どもを育てる世帯の困窮割合は23.2%だった。およそ4世帯に1世帯が困窮世帯という計算だが、ひとり親世帯に限るとその割合は63.3%に跳ね上がる。
 子どもの貧困問題の解決を図るためにも、全国に比べて低い沖縄の所得水準の引き上げは待ったなしだ。新計画には、従業員の所得向上に取り組む企業を認証する「所得向上応援企業認証制度」(仮称)の創設が盛り込まれた。認証によって、個々の企業が社会課題への貢献を実感しやすくなる。経済界を挙げて制度を広げてもらいたい。
 妊娠・出産期から子どもの社会的自立まで、切れ目のない支援を計画に明記したことも評価できる。ライフステージに即した課題に有効な手だてを打つことができる。特に若年妊産婦の支援に力を入れることに期待したい。
 県内女性が10代で出産する割合は全国2.4倍になるという。10代での出産は知識の不足などから不安が大きく、収入も乏しい。若年妊娠に親の理解が得られない場合もある。居場所を失い孤立すれば、出産後の困窮や虐待につながりかねない。
 私たちが目指すのは、誰もが安心して出産でき、生まれた子どもたちに等しく成長や学びの機会を保障する社会だ。琉球大の上間陽子教授らが昨年、若年出産のシングルマザーを保護するシェルター「おにわ」を民間で設立した動きもある。公的サポートを厚くしながら官民で連携を取り、個々の子どもや親の事情にきめ細かく対応できる体制づくりを進めてほしい。
 沖縄は地縁血縁を中心に人のつながりが強いイメージがあるが、社会的な孤立も進んでいる。ひとり親世帯に頼れる人がいない相談事を聞いたところ、「重要な事柄の相談」は全国8.9%、沖縄は12.1%だった。さらに「いざという時のお金の援助」は全国25.9%に対し、沖縄は41.5%と大きく上回った。
 子どもたちをひとりとして取り残さず包摂していく社会づくりに取り組みたい。そのためにも県民運動の熱量を持続する推進体制が大切だ。