<社説>1票の格差高裁判決 速やかに10増10減実施を


社会
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 「1票の格差」が最大2.08倍だった2021年10月の衆院選は違憲で無効として全国で起こされた訴訟で判決が3件相次いで出された。高松高裁、大阪高裁は「違憲状態」、東京高裁は「合憲」と判断が分かれ、3高裁とも「違憲」には踏み込まなかった。11年から18年の間の4回の最高裁判決で2倍未満という基準が確立されているにもかかわらず、今回「違憲」判断を見送ったのは、政治に甘いと言われても仕方がない。

 10増10減の区割り是正に自民党から反発が出ているが、投票価値の不平等をこれ以上放置できない。10増10減を速やかに実施すべきだ。
 訴訟は全国14の高裁・高裁支部で起こされており、福岡高裁那覇支部では24日に言い渡される。3月9日までに判決が出そろい、上告により、再び最高裁が統一判断を示す見込みだ。
 衆議院の区割りについては、16年成立の衆院選挙制度改革関連法で人口比を反映しやすい「アダムズ方式」の導入が決定していた。昨年6月に、20年国勢調査の速報値が報告され、アダムズ方式に基づいて15都県で10増10減の是正が行われることが明らかになっていた。
 高松高裁と大阪高裁は、2倍超が29選挙区に及んだことから「違憲状態」とした。しかし、国勢調査の結果が分かってから選挙まで4カ月で是正は不可能だったとして「合理的な期間内に是正されなかったとはいえない」ため「違憲」としなかった。一方、東京高裁は国会が努力したと評価し、2倍を超えたのは「想定外の人口移動が原因」として「合憲」と判断した。
 しかし、最高裁が最大格差1.98倍だった17年の衆院選を合憲としたのは18年12月であり、衆院の任期満了が21年ということは分かっていた。2倍を超えると想定できないだろうか。国勢調査を待たずに是正できたのではないか。
 今年になって自民党からアダムズ方式による10増10減に反対の声が出ている。
 アダムズ方式とは、総人口を総定数で割った数を基準人口とし、都道府県人口を基準人口で割って定数を決める方式である。小数点以下を切り上げるので、2.1なら定数3となる。格差は2倍を超えず、かつ人口の少ない地域に配慮され、最も人口の少ない鳥取県も定数2が確保できる。10増10減で格差は1.69倍程度になるとされている。
 自民党の反発は、自民党が強い地方の議席が減ることと、定数が減る県の選挙区調整が困難になるという、まさに党の事情によるものだ。法律で定めたことを履行しなければ、今度こそ「選挙無効」を宣告されるだろう。
 目前に迫っている参院選も改革が求められている。そもそも、憲法が要請する「投票価値の平等」は1.0倍でなければならない。衆参とも、抜本的な制度改革の議論を進めるべきだ。