<社説>自立支援18歳上限撤廃 孤立させない取り組みを


社会
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 厚生労働省は、児童養護施設や里親家庭で育つ若者の自立支援に関し原則18歳(最長22歳)までとしている年齢上限を撤廃することを決めた。開会中の通常国会に児童福祉法改正案を提出する方針だ。

 施設などの社会的養護のケアを離れた人は「ケアリーバー」と呼ばれている。その人々は親などを頼れず生活が困窮したり、孤立に陥りやすくなったりするなどの問題を抱えている。このため年齢上限の撤廃は、自立の準備が整うまで切れ目なく支援する狙いがある。
 年齢上限撤廃は支援制度の拡充に向け一歩前進である。評価したい。問題は、個々に適した切れ目のない支援をどう実行するかである。自治体や施設、里親などの関係者には、ケアリーバーを孤立させないよう実効性のある取り組みが求められる。
 ケアリーバーは、主に経済的な理由で進学したくても進学できなかったり、住まいが確保できなかったりしている問題が指摘されている。施設を退所した後、生活や将来に不安を抱き、孤立や孤独を感じる人も少なくないという。
 こうした現状から自立へつなげていくには、孤立感を抱かせないよう悩みや不安を打ち明けられる関係性をつくることが重要だ。
 ケアリーバーの実態を把握するため厚労省が2020年度に実施した全国調査によると、措置解除者らと施設職員・里親家庭との直接の交流は「1年に1回もない」と答えた割合が31.1%で最も高く、次いで「半年間に1回以上」が18.6%だった。
 この調査は悉皆(しっかい)調査であるにもかかわらず、施設や里親から調査票が案内されたのは全体の約3分の1にとどまり、残りは所在が不明などの理由で調査票の案内すらできなかった。措置解除後、交流の機会が極端に減ったり、交流を絶ったりするケアリーバーが多く存在することが浮き彫りになった。
 個々人に適した支援をするには、不安に耳を傾け、どんな支援をしてほしいかなどを把握することが前提である。自立支援は、既存のケアの延長を検討するだけでなく、措置を解除した後、孤立せずに自立に至っているかどうかを確認することも必要だろう。連絡すれば、耳を傾け親身になってくれる人がいるかどうかが肝要だ。
 県内の関係者によると、施設を卒業するにはまだ不安が残る子が一定数いるものの、現行制度では、よほどの事情がない限り支援延長はできないという。今回の法改正により自治体が柔軟に対応することが可能になると期待する声が上がった。
 一方で、継続的な支援の在り方や関係機関との連携などが課題として挙げられた。自治体を含む関係者は今回の法改正を機に、どのように支援を拡充するか、具体的な取り組みについて連携し合って検討を進めてほしい。