<社説>2022年度県予算案 暮らしの安定へ全力を


社会
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 県の2022年度一般会計当初予算案が8606億2千万円に決定した。21年度当初予算を694億円(8.8%)上回り、2年連続で過去最高額を更新した。

 当初予算規模として初の8千億円台となった今回の予算編成は、新型コロナウイルス感染拡大の長期化で影響を受ける県民生活や地場産業を手厚く支援する決意を示したものだろう。支援事業の迅速な執行など、暮らしの安定に全力を挙げてもらいたい。
 県内でコロナウイルス感染が確認されて2年になる。新たな変異株の流行で今もまん延防止等重点措置が適用されるなど、収束の見通しは立っていない。
 その中で都道府県のかじ取りはますます重要になっている。医療界と連携をとり、感染の拡大を防ぐ措置や地域医療体制を崩壊させない対策を躊躇(ちゅうちょ)なく講じるリーダーシップが求められる。それとともに経済の疲弊や雇用の悪化、教育の混乱を抑える有効な施策も重要だ。
 県は今回の当初予算案で、新型コロナ対策関連の費用として1281億円を計上した。予算全体の約15%を占める規模だ。医療体制の構築やワクチン接種促進などの感染症対策に加え、コロナ後の沖縄観光の立て直しで国内旅行需要の喚起策「Go Toおきなわキャンペーン」に376億円、県民の県内旅行を助成する「おきなわ彩発見キャンペーン」に79億円と大型の予算を確保する。
 観光産業の安定化を図る基金設置条例も制定し、一般会計から40億円を積み立てる。危機に強い沖縄観光へと足腰を強める契機としたい。
 22年度は、沖縄の日本復帰50年以降の新たな沖縄振興計画がスタートする。玉城デニー知事にとっては1期目の最終年度として、「誰一人取り残さない社会」に向けた集大成の予算編成ともなった。
 子どもの貧困対策で、「県子どもの貧困対策推進基金」の設置期間を31年度までに延長し、過去最大の60億円規模に積み増す。復帰50年の記念では5月15日の記念式典をはじめ、アジア太平洋地域の緊張緩和に向けた県独自の「自治体外交」施策、首里城地下の第32軍司令部壕保存・公開事業、第7回世界のウチナーンチュ大会など42事業を企画する。関連事業の総額は約58億8千万円となる。
 節目の年を反映した重要な予算案となる。一方で、県の借金返済に当たる公債費も歳出の7.9%を占める。コロナ禍で歳出圧力が強まる中、無用に予算や借金を膨らませない財政規律も必要だ。
 そうした中で、国の沖縄関係予算が前年度比約330億円減となったことで、県の投資的経費はここ10年で最も低くなる見通しだ。予算は県民の暮らしに直結する。基地問題を巡り対立する県を財政面で追い込むため、国が予算を恣意(しい)的に運用することがあってはならない。