<社説>ヤングケアラー1088人 実態把握と支援が急務だ


社会
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 県が県内小学5年から高校3年までの学級担任を対象に実施したアンケートで、ヤングケアラーと思われる子どもが少なくとも1088人(全児童生徒の0・86%)確認された。

 ヤングケアラーは、大人が担うような家事や家族の世話を日常的に行う18歳未満の子どもを指す。県による初の調査で、実態把握に向けた第一歩として評価したい。ただ対象は担任だったため実態を反映していない可能性がある。
 確認された人数について識者は「氷山の一角」と指摘し、実際はもっと多いとみる。今後、さらなる実態の把握を進め、困っている子どもへの支援につなげることが急務だ。
 調査結果によると、1088人の内訳は小学5・6年生239人、中学生508人、高校生341人。ケアの状況を見ると「家族の代わりに幼いきょうだいの世話をしている」が43・6%で最多だった。「障がいや病気のある家族に代わり、家事をしている」13・8%、「目を離せない家族の見守りや声掛けをしている」7%などと続いた。
 問題は学校生活への影響である。学校を「休みがちである」が20・2%、「精神的な不安定さがある」15%、「遅刻や早退が多い」と「学力が低下している」がそれぞれ13・2%と多かった。
 「○人~○人」など概数での回答もあり、県は最少の数字を発表したため実際はさらに多い。回答率も70・4%なので、約3割の担任が答えていないことから、実際の数はさらに増えるとみられる。
 全児童生徒の0・86%という割合は、昨年3月に国が実施した実態調査と比べても小さい。国の調査では中学生5・7%、高校生は4・1%だった。昨年11月に糸満市が実施した実態調査を見ても市内小学5・6年生と中学生のうち14・3%を占めた。
 そもそもヤングケアラーの存在は把握しにくい。子どもは家族の障がいや病気などについて相談することに引け目を感じることが多い。一方、社会には「世話や介護は家族で支えて当たり前」という風潮が根強い。こうしたことが存在の把握を妨げている。
 このため、まずは周りの大人が存在に気付くことが重要だ。学校の教師やPTA関係者、隣近所や地域の人々、親戚らが普段から意識し、子どものSΟSを察知することである。子どもたちが相談しやすい環境づくりも求められる。
 県の調査はヤングケアラーへの認知度を高める点でも意義がある。調査では担任の約3割が認識不足だったことも判明した。これを機に認識を深めてほしい。
 県は新たな子ども貧困対策計画にヤングケアラーの実態調査を盛り込む方針だ。子どもの貧困問題と重なる面にも着目し、総合的に捉える必要がある。教育、福祉だけでなく、医療や介護の分野も含めて連携し、効果的な支援につなげてほしい。