<社説>県政運営方針 「建議書」の実現宣言を


社会
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 玉城デニー知事は、県議会の2月定例会で2022年度の県政運営方針を表明した。

 今年は沖縄の施政権返還(日本復帰)から50年の節目の年である。知事は復帰に当たり作成された「復帰措置に関する建議書」を例示し、先達が描いた新生沖縄像と現在を比較し「建議や宣言のあり方」を検討すると表明した。
 沖縄が主体性を発揮することを宣言した建議書の精神はいまだに実現していない。新たな「建議や宣言」を発表するのであれば、建議書の実現を宣言することこそ現実的ではないか。
 そこで玉城知事が県政運営の冒頭で示したいくつかの具体策を建議書に照らして考えてみたい。
 まず第32軍司令部壕について「壕内および周辺の環境調査など、保存・公開に向けた取り組みを加速していく」と明言した。「議論を進めていく」という表現にとどめた昨年より踏み込んだ点を評価したい。
 建議書は「沖縄は、余りにも国家権力や基地権力の犠牲となり手段となって利用され過ぎてきました」と表明している。第32軍司令部壕は、沖縄戦を指揮した中枢である。ここから発せられた方針によって県民の4人に1人が犠牲になった。
 統一ドイツ初代大統領のワイツゼッカー氏はかつて「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」と演説した。司令部壕は、沖縄の現代史を学び、未来を展望するための、貴重な戦争遺跡である。ぜひ保存・公開すべきだ。
 次に、在沖米軍基地について知事は「当面は在日米軍専用施設面積50%以下を目指す」と述べた。「50%以下」は昨年の県政運営方針で初めて登場し、数字の根拠を示さずあいまいだと批判された。今年もほぼ同じ表現で残した理由を説明してもらいたい。
 米軍基地について建議書は県民の人権を侵害し生活を破壊する「悪の根源」と指摘し、撤去を要求した。同時に自衛隊の沖縄配備にも反対した。
 日本復帰時点の米軍専用施設の面積の割合は沖縄58.7%だったが、50年後の今は70.3%である。減るどころろか基地は沖縄に集中し、さらに名護市辺野古に新基地建設を強行している。自衛隊施設面積は20年現在で復帰時の4.6倍である。
 県政運営方針の冒頭で知事は「自立型経済の構築はなお道半ばにある」という認識を示した。その上で、人材投資などによる企業の「稼ぐ力」の向上に向け、支援することを明言した。
 もちろん稼ぐ力を磨くことは大切である。だが自立経済が「道半ば」である真の理由は別にある。基地の存在だ。基地は沖縄経済の阻害要因である。この事実は復帰50年間に県民が身をもって体験した。
 沖縄の地域特性やソフトパワーを生かすために、何が必要なのか。県民が共に考え実践していきたい。