<社説>ウクライナ緊迫 「ミンスク合意」に戻れ

 ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名、2地域に軍を派遣し平和維持に当たるよう国防省に命じた。

 主権国家の主権と領土の一体化に対する侵害は、認められない。これ以上、事態をエスカレートさせてはならない。20世紀、欧州での紛争が2度の世界大戦の引き金になった。当事国は、ウクライナ東部の紛争解決に向けた「ミンスク合意」の枠組みに立ち返って、外交交渉による問題解決を目指すべきだ。
 ミンスク合意は2014年と15年に結ばれ、親ロ派武装勢力が実効支配するウクライナ東部ドンバス地域を巡る紛争の停戦や、この地域への一定の自治権付与が含まれる。ロシアとウクライナ、仏独の4カ国がまとめた。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は、19年の大統領選で、ロシアとの対話や、東部ドンバス地域の紛争終結を公約して当選した。しかし、任期半ばを過ぎても紛争解決に向けたミンスク合意を順守しようとせず、紛争終結のめどは立たない。
 一方、ミンスク合意を履行させたいはずのロシアは今回、ウクライナに軍事圧力を強め「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した。ミンスク合意を、自らほごにするような行為である。ロシアにとって何のメリットがあるのか。
 米欧はウクライナ国境付近に集結したロシア軍部隊の侵攻を懸念し、独立を承認しないよう警告していた。プーチン氏の決定を、米欧がウクライナ侵攻と受け取ればロシアの経済制裁を招き、孤立を深めるだけではないか。
 昨年のバイデン米政権の誕生によって、「NATOの連帯が再び強化され、ウクライナが対米接近を強めたため、NATOのさらなる拡大を阻止する必要があった」と見る向きもある。バイデン大統領は独立承認を強く非難し、対抗措置を発令したが、むしろ欧州の緊張緩和に向けた外交努力を強化すべきだ。
 ミンスク合意の当事国であるフランスのマクロン大統領は、合意の履行が「平和と政治的解決につながる唯一の道だ」と強調している。ロシア、ウクライナ、ドイツの4カ国に、親ロシア派武装勢力を加えて、話し合いのテーブルにつくことだ。
 米国の歴史家バーバラ・タックマンは著書「八月の砲声」で、第1次世界大戦が1発の銃声をきっかけに始まり、大国の思惑や誤算、過信が重なって長い泥沼の戦争へ引きずり込まれる様子を描いた。
 この本を読んだケネディ大統領は陸軍の全将校に一読を指示したという。そして、外交交渉によって武力衝突を避け、キューバ危機(1962年)を回避したといわれる。
 国際社会は、「戦争の世紀」と言われる20世紀の教訓を今こそ学ぶべきだ。



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