<社説>ウクライナ侵攻 ロシア軍は即時撤退せよ


社会
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 ロシア軍は24日、ウクライナに侵攻した。プーチン大統領は「自衛目的」と説明するが、およそ武力行使する側の決まり文句である。

 主権国家の主権と領土への不介入は国際社会のルールである。このルールを踏みにじる行為は決して容認できない。ロシアに対しウクライナからの即時撤退を要求する。全面的な武力衝突を避けるため、国際社会に、結束して事態の早期収拾を求める。
 ロシア国防省は、ウクライナの首都キエフなど各地の軍事施設をミサイルで空爆したと発表した。米CNNテレビはベラルーシ側からウクライナ北部に軍事用車両の車列が入ったと報道した。
 ロシアは隣国ウクライナのNATO加盟に強く反対していた。ウクライナに欧米の軍事施設が配備された場合、ミサイルがモスクワに到達する時間が「10~7分、あるいは5分にまで」大幅に短縮され、ロシアにとって安全保障上最も重大な脅威になると主張していた。
 ウクライナやNATOからすれば防衛力の強化だが、ロシアはそれを脅威に感じる。他国の力の増大に脅威を感じ、これを恐れて行動する。これを繰り返すと安全保障のジレンマに陥る。そのジレンマを避けるために、第2次大戦後に国家同士が協力、対話をする以外にないという合意が生まれたはずだ。
 合意の結果、国連が誕生し、世界の平和と安全に責任を持つ国連安全保障理事会が設置された。だが安保理の機能不全は深刻だ。安保理がウクライナ情勢を巡る緊急会合を開いていた真っ最中にロシアはウクライナに侵攻した。ロシアは安保理で責任を果たすべき常任理事国だ。
 安保理緊急会合でケニアの大使が行った演説に賛同したい。
 プーチン大統領がウクライナ東部の2地域の独立を承認したことについて、ケニア大使は「この状況は私たちの歴史と重なる」と述べ、次のように非難した。
 「私たちの国境は自分で引いたものではない。ロンドンやパリ、リスボンなど植民地時代のはるか遠くの大都市で引かれたものだ」
 アフリカは欧州列強の植民地支配を受け、列強同士が勝手に決めた国境によって分割された。その状況を、ウクライナの現状に重ねたのだろう。大国の利益や安全保障の手段として小国が利用された歴史を繰り返してはならない。
 一方、ウクライナ情勢が東アジアの平和の不安定要素になることを危惧する。
 ジョンソン英首相はロシアがウクライナに侵攻すれば「衝撃や動揺は世界中に広がる。反響は東アジア、台湾にも及ぶ」と指摘した。台湾への威嚇を強める中国を念頭に置いた発言とみられる。米軍基地が集中し自衛隊の配備増強が続く沖縄が、紛争に巻き込まれないよう、外交力の強化を日本政府に求めたい。