<社説>成人年齢の引き下げ 見守りと検証が不可欠だ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 成人年齢を18歳に引き下げる改正民法の施行まで1カ月を切った。県立高校の卒業式が1日に実施され、学び舎を巣立ったばかりの生徒たちが、4月1日に今度は大人の仲間入りを果たす。

 明治期以来の変更だ。大人の定義が変わることになり、消費者契約でのトラブルなど、さまざまな懸念が示されてきた。準備は十分だろうか。新成人を迎え入れる社会の側も改めて備えておきたい。
 これまでは20歳未満は親の同意が必要だったクレジットカードやローンの契約が同意なく可能になる。高額商品の購入でローンを組むことや、消費者金融での借り入れもできる。
 住む場所を自分で決め、独り暮らしのために携帯電話を契約したり、アパートを借りることもできるようになる。
 一方、酒とたばこの年齢制限は20歳で変わらない。競馬、競輪など公営ギャンブルの解禁も20歳のまま。健康被害やギャンブル依存症への対策だ。完全に発達しきれていない心身を守る措置である。
 懸念されるのは社会経験に乏しいがためのトラブル。未成年が親の同意なく結んだ契約は取り消すことができたが、18、19歳には適用されなくなる。政府はトラブルを防ぐため、消費者教育の推進を掲げてきた。
 加えて消費者契約法を改正。不安をあおったり、恋愛感情を利用したりするなど「困惑する状況で結んだ契約」については取り消しを可能とした。ただ、悪質な業者ほど、手口を変えて経験の浅い新成人を狙ってくることも考えられる。
 国民生活センターによると、消費者相談は20歳を越えると増える傾向にある。10代は契約の取消権などで保護されていた部分もあるだろう。4月以降、発生するトラブルを注視するなど、激変する新成人の暮らしについて、しっかりと見守る必要がある。
 そもそも引き下げのきっかけは憲法改正の手続きを定めた国民投票法の成立だった。若者の積極的な社会参加を促すために議論となり、成人年齢の引き下げにつながった。
 同じ論点から引き下げにつながったのが選挙権年齢だった。ただ、投票権が18歳からになって以降、国政選挙では10代の低投票率が続く。社会の担い手として自立してもらいたいという一連の立法の狙い通りとはなっていない。
 海外に目を向ければ18歳成人が主流だ。20歳としているのは先進7カ国(G7)では日本だけだった。世界の潮流に合わせることにはなるが、1876(明治9)年以来、146年続いた大人の定義の変更だ。独り立ちする18歳、19歳を支援するすべは十分なのかどうか、社会的な支援の在り方も検証されるべきだ。
 大人とは何か、社会の担い手であるとはどういうことなのか。新たな成人を迎え入れるのに合わせ、改めて考える契機としたい。