<社説>トートーメーの継承 男女の協力欠かせない


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 3月8日の国際女性デーに合わせ琉球新報が実施したトートーメー(位牌)に関するウェブアンケートによると、継承者は男性が8割を占める一方、家内の伝統行事の準備や後片付けは女性が担っているとの回答が8割を超えた。

 トートーメーにまつわる行事で女性が過大な負担を背負わされている。先祖を敬い、そのつながりに感謝する沖縄の祖先崇拝の伝統を継続していくには男女が共に協力し合い、知恵を出し合って見直していくことが欠かせない。
 アンケートからは、男性親族が酒席を楽しむ傍らで、女性はその準備、片付けに追われ、負担に感じているとの回答が多く寄せられた。
 女性の負担は、幼い頃から見聞きする若い世代も実感するのだろう。結婚観にも表れ、パートナーの家にトートーメーがあることについて半数超の54.2%が「気になる」と回答。「付き合っていた女性と別れる要因の一つになった」という男性の記述もあった。
 父系の血縁を大切にしてきた沖縄の祖先崇拝の文化や考え方は、行事だけではなく、相続や財産分与が長男に優位に働いている可能性もあろう。結婚への影響を含め、女性だけの問題ではない。
 トートーメーのある風景の中で男女役割が固定化している一方、誰が継ぐべきかの問いに「誰が継いでもいい」との回答が56.6%と半数を上回った。女性が継ぐことへの抵抗感は薄れている。
 こうした多様性の深まりを反映してか、アンケート回答からは、現代の家族の在り方、個々の事情に合わせて行事運営の負担を軽減している事例がいくつも寄せられた。きょうだいや親族で役割を分担するほか、食事を持ち寄ったり、ホテル会場や仕出しを利用したりしているケースである。
 きょうだい模合の積み立てから行事関係の費用を捻出しているとの記述もあった。大事な家族のつながりを継承していくための工夫である。参考になるアイデアだ。
 「地域からジェンダー平等研究会」の調査によると、沖縄の男女平等の度合いは経済分野では女性社長が多いことから全国1位となった。行政分野で16位、教育分野で15位にランクインしている。
 ただ、この調査の経済分野では、男性の賃金が低い地方で平等度が高くなる傾向があるなど、もろ手を挙げては喜べない。研究会の三浦まり上智大教授は調査目的は順位付けではなく、地域ごとの男女格差の特色を発見し、地方からジェンダー平等を底上げすることにあると説明する。
 琉球新報のアンケート結果からは、トートーメーの継承で多様な選択肢を認める意見が大半を占め、行事運営でも柔軟な在り方を各家庭で模索している様子がうかがえる。その模索は男女役割の固定化についても現状を直視し、変えていく契機にもなる。ジェンダー平等を実感できる沖縄社会を男女一緒に築きたい。