<社説>「部活で体罰」225人 対策を徹底し撲滅目指せ


社会
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 県教育委員会が県立高校の部員や指導者、保護者らを対象に実施した2回目の部活動実態調査で、225人の部員が体罰やハラスメントを受けていたことが判明した。昨年5月に発表した前回調査での133人よりも増えている。

 中でも直視すべきは、被害者のうち「問題は解決した」と答えた部員は前回比6・4ポイント減の12・4%だったのに対し、指導者は前回比6・1ポイント増の63・2%だったことだ。前回調査よりも両者の認識のずれが大きくなっている。
 問題は解決に向かうどころか増えており、指導者が問題を覚知していない実態がうかがえる。部活動は教育の一環だが、体罰や暴言は教育ではない。指導者はそれをしっかり自覚する必要がある。部員の相談窓口設置や指導者への研修など対策を徹底し、体罰やハラスメントの撲滅を目指すべきだ。
 今回の調査で被害を受けた部員に対し「最初に誰に相談したか」を聞いたところ「同じ部の部員」が最多で40・0%、「誰にも相談できていない」が32・4%で2番目に多かった。一方、指導者に対して、部員や保護者などから「暴力・暴言・ハラスメントの訴えがあったか」を問う質問には99・2%が「なかった」と答えた。
 問題が発生していても指導者が気付いていない可能性がある。部員たちの訴えを丁寧に拾う仕組みづくりが課題だ。それと同時に、指導者だけでなく学校の関係者らは生徒たちの目線や立場に立ち、問題は本当に解決しているのか、敏感に察知する姿勢が肝要である。
 調査の回答率も気になる。前回調査が31・7%だったのに対し、今回は26・6%だった。回答率が低いと実態の全容は把握できない。調査結果の数字225人よりも実際の方が多いとみられる。回答率を上げて少しでも実態を把握する努力と、なぜ被害者が前回よりも増えているのか、これまでの対策の効果を検証する必要がある。
 県教育委員会は2018年に文部科学省などが出したガイドラインを基に「運動部活動などの在り方に関する方針」を策定した。方針では、運動部顧問は年間と毎月の活動計画、活動実績を作成し、校長に提出することになっている。校長は学校の部活動方針とともにホームページに掲載する。
 文科省のガイドラインによると、体罰は禁止されており、生徒の人間性や人格の尊厳を損ねたり、否定したりするような発言や行為は許されない。体罰の事例として、殴る、蹴る、セクハラと判断される発言・行為などを挙げている。
 これらの方針やガイドラインがきちんと守られ、実際に取り組まれているかチェックすることも対策徹底の一つだ。一方で指導者は、生徒との信頼関係づくりを大切にしつつ、自身の言葉や行動が指導を逸脱していないか、常に自覚することが求められる。