<社説>安保法施行6年 「非戦の誓い」忘れるな


社会
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 日米の軍事一体化を進める安全保障関連法は、29日で施行から6年を迎えた。

 この法律は日本への武力行使がない段階で、集団的自衛権を行使するという憲法違反の内容を含む。戦後77年、守り続けた「非戦の誓い」を忘れてはならない。県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦を体験した沖縄からの切実な声である。
 憲法の平和の原則を骨抜きにする安保法は決して認められないことを繰り返し確認したい。
 核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮への対抗、軍事的な台頭が著しい中国への脅威論を背景に米国からの軍事一体化の要求も強まり、第2次安倍政権で「法の番人」と呼ばれる内閣法制局長官に、政権の意向に沿う立場で法制局勤務経験のない駐フランス大使を起用する人事を断行した。集団的自衛権を行使できると憲法解釈を変更し、15年に安保関連法を強引に成立させ、現在に至る。
 歴代の法制局長官や憲法学者ら専門家は、解釈変更や安保法を違憲だと訴えたが、安倍首相は押し切った。
 森本敏元防衛相は「台湾に中国軍が駐留すると、日本の南西諸島が最前線となり在日米軍も直接の脅威下にさらされ」ると指摘する。麻生太郎副総理は昨年7月、中国が台湾に侵攻した場合、集団的自衛権行使を可能とする安保法の「存立危機事態」として対処すべきだとの見解を示した。さらに「(台湾有事の)次は沖縄。そういうことを真剣に考えないといけない」と強調した。
 この6年間に沖縄では米軍と自衛隊の一体化が進んでいる。今年1月、岸田内閣初の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれた。共同発表は、南西諸島での自衛隊強化と日米の施設共同使用増加を盛り込んだ。
 台湾有事が起きれば米軍が台湾軍を支援するため、米軍基地が集中する沖縄が巻き込まれる可能性は高い。自国が攻撃されなくても戦争に参加する集団的自衛権を、安全保障関連法に基づき行使し自衛隊が後方支援などを行えば、必然的に自衛隊基地も攻撃対象となる。さらに、台湾有事を前提とした共同作戦計画を策定することは専守防衛から逸脱し戦場化は目の前に迫った危機と言わざるを得ない。
 そうなると住民を戦闘に巻き込むリスクが飛躍的に高まる。だが自衛隊制服組幹部は「申し訳ないが、自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と吐露した。
 懸念されるのはウクライナ情勢に乗じて憲法を逸脱する議論の加速である。台湾有事などを想定し敵基地攻撃能力保有を主張する意見が国会で相次いでいるが、戦争放棄をうたった憲法の理念を骨抜きにすることは許されない。南西諸島を二度と戦場にさせてはならない。