<社説>辺野古不承認取り消し 沖縄の民意踏みにじるな


社会
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 名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て工事の設計変更を不承認とした県の処分を、国土交通相が取り消す裁決を行った。県は対抗措置を検討しており、再び国と法廷闘争になりそうだ。昨年11月に玉城デニー知事が不承認を表明した時点で想定されていた展開だが、国と県が法廷闘争を繰り返さなければならないのは、政府が沖縄の民意を踏みにじり続けるからだ。取り消し裁決に断固抗議する。

 翁長雄志前知事の埋め立て承認取り消し、翁長氏死去後の承認撤回に続き、国交相が取り消すのは3回目だ。
 過去2回とも法廷闘争は複雑な経緯をたどり、現在、撤回を巡る抗告訴訟が最高裁で係争中だ。最高裁で県の敗訴が2件確定している。
 玉城知事が昨年11月に不承認を表明したのは、新基地建設に反対する県民の意思を受け、自らの公約に沿ったものだ。しかし、政府は工事を続行しており、訴訟となっても工事を強行していく腹づもりだろう。県は引き続き法廷闘争に挑まざるを得ない。
 沖縄の民意には正当な理由がある。まず、日本の国土面積の0・6%に米軍専用施設の約70%が集中している過重負担がある。事件事故、爆音、汚染など、深刻な人権侵害が続いている。この広大な基地の大半は、住民の同意のない一方的な占拠・強奪によって形成されたものだ。
 軍用地返還を求める地主に対する強制使用は、1972年に沖縄の施政権が日本に返還されても、駐留軍用地特別措置法などにより続いた。これは憲法95条「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」に反する。2019年の県民投票で約7割が新基地に反対した結果にも反する。
 広大な基地は経済にも大きな制約を強いている。新基地は、世界的に貴重で観光資源としても大きな可能性を持つ海域を破壊し消滅させるとともに、キャンプ・シュワブを固定して、周辺の経済発展を永遠に阻害する。これは、公有水面埋立法の1号要件「国土利用上適正かつ合理的なること」に明らかに反する。
 同要件の本質は「国土利用上の効用」である。13年当時の仲井真弘多知事の埋め立て承認を、埋め立てによる損失と効用の比較で評価すべきである。訴訟になるのなら、沖縄県は改めてこの点を主張・立証すべきだ。
 ロシアのウクライナ侵攻や中国脅威論を背景に、南西諸島の軍備強化が必要だという主張が増えていることも、政府の強硬姿勢を支えている。しかし、沖縄戦の教訓を受け継ぐ私たちは、戦争が絶対悪だと知っている。基地の拡大は、沖縄を戦場にする危険性をさらに高める。知事に、毅然(きぜん)として民意を体現し続けることを望みたい。