<社説>孤独孤立問題の深刻化 実効的な支援が必要だ


社会
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 新型コロナウイルスの感染拡大で深刻化している孤独・孤立問題について、2万人を対象にした政府の初の実態調査が行われた。約4割もの人が孤独感が「ある」と回答した。高齢者よりも20~30代が孤独を感じていることも分かった。

 孤独や孤立は高齢者に特有の問題と思われてきたが、若者でより深刻度を増している。所得が低いほど割合が高くなる傾向も判明した。支援につなげるための分析と政策の実施が求められている。
 新型コロナの影響が顕著だ。感染拡大後、人と直接会うコミュニケーションについて聞くと、約3人に2人の67・6%が「減った」と回答した。同居以外の家族や友人と会って話す頻度は「月1回未満」が最も多く15・2%。「月1回程度」が13・8%、「全くない」も11・2%に上った。
 世帯の年収が低いほど、孤独だと感じる割合は高くなった。孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は、失業中や心や体の状態が良くないと答えた人に多かった。
 県内では直近1週間の人口10万人当たり感染者数の全国1位が続いている。低所得層の多さも沖縄の特徴だ。政府の初の実態調査が示す傾向からは、県内での孤独・孤立問題がより深刻であることも類推できる。地域ごとの実態の把握も急務である。
 休校や休業、オンライン学習やテレワークの拡大で人との接触が制限された。失業の増加で、孤独感がより深まっている可能性もあろう。
 外出の自粛や抑制、「孤食」や「黙食」の推奨など、感染抑止のためとはいえ、息苦しく感じる場面が増えた。人間関係が希薄になり、不安を共有する機会が減ることは心の健康に影響する。
 2021年の全国の自殺者は2万1007人。09年以来の増加となった20年より74人減少したが、新型コロナ流行前の19年より838人多く、高止まりの状況だ。女性の自殺者が2年連続で増加するなど、傾向に変化もみられる。県内の自殺者数は20年比で32人増の246人だった。
 孤独・孤立問題は自殺に深刻に関連しているとも指摘されている。政府が昨年まとめた孤独・孤立対策の重点計画は、孤立した状況に置かれることは当事者の問題ではなく「社会全体で対応しなければならない問題」と位置づけた。
 悩みを持つ人は支援を求めることをためらいがちであることが課題だという。誰もが声を上げやすくすることは、まさに社会全体で考えなければならない問題だろう。
 日本は昨年、孤独・孤立対策の担当相を置いた。担当相の配置は英国に次いで世界で2番目だったという。
 いち早く体制を整えたのであれば、より実効的な対策を求めたい。省庁の垣根を越えて取り組むべきだ。孤独にさいなまれる全ての当事者を支援へと早急につなげる必要がある。