<社説>オスプレイ設計上問題 国内での飛行を止めよ


社会
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 沖縄県民、日本国民の命を軽視した内容は前代未聞だ。2021年8月に発生したオスプレイの部品落下に対する米軍の事故報告書を、本紙が米国の情報公開制度により入手した。その中身は人命軽視、軍事優先の代物だった。

 再発防止策もこれまで繰り返された通り一遍のものでしかない。何より落下の要因に設計上の問題があると知りつつ、現在も同型機を運用していることに、いまだ占領軍意識が残る米軍の本質を見る。
 オスプレイは沖縄だけでなく、東京都、千葉県にも配備されている。政府は報告書の内容を確認した上で、国内でのオスプレイ即時飛行停止を米側に求めるべきだ。
 報告書で最も衝撃的なのは、落下した部品のうちプロペラエンジンカバーに付いている「ブレードフェアリング」に関する記述だ。報告書はこう記す。「(同系統機を含む)V22界隈(かいわい)ではありふれた落下物で、(落下は)整備が要因でないと考えられる」
 開発段階から「未亡人製造機」とやゆされたオスプレイの構造的欠陥を認めた。その上でオスプレイの部品が落ちるのはよくあることだ、という開き直りにしか読めない。
 ブレードフェアリングは長さ幅とも43センチ、重さは不明という。同時に落下した機体パネルは長さ約109センチ、幅68センチ、重さは約1.8キロある。
 2015年に東京都でマンションの上層階から水が入った2リットルのペットボトルを故意に落下させ、少年が逮捕される事件があった。
 当時の報道によると、約2キロのペットボトルを50メートルの高さから落とすと、落下速度は時速100キロに達する。頭に当たれば頭蓋骨骨折の可能性もある「凶器」になる。
 航空法で定める市街地での最低高度(300メートル)を飛んだとして、仮に市街地上空で落下事故があった場合、オスプレイの部品は「凶器」と化して県民の頭上に降ってくる。その可能性は、米軍にとって「ありふれた」出来事でしかないと言えるものなのか。
 報告書でさらに見過ごせないのは、設計上の問題、整備の問題を把握しつつ日本側にいまだ説明がないことだ。
 事故発生翌日に米軍は「事故機固有の問題」であるとして、県などの飛行中止要求を拒否した。岸信夫防衛相も米側の説明を信じて飛行停止を求めなかった。
 報告書の内容は、日米の信頼関係を損ねる重要な問題をはらんでいる。もしくは日本軽視の表れともいえる。
 岸田文雄首相、岸防衛相とも外交・安全保障に関して「日米同盟の強化」「日米防衛協力の深化」を掲げる。
 だが実際は米軍は機体の設計上の問題を隠し、事故後の原因究明も日本側にまともに説明しようとしない。果たしてこれが同盟国の在り方か。
 米軍の都合ばかりを優先し、自国の空の安全も確保できないなら、主権国家の看板を今すぐ下ろすべきだ。