<社説>復帰50年問うシンポ 首相の決断で負担軽減を


社会
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 沖縄の施政権返還とは何だったのかを考えるシンポジウム「沖縄復帰50年を問い直す」(琉球新報社、毎日新聞社、アジア調査会共催、BS―TBS後援)が28日に東京都で開かれ、登壇者からは重い発言が相次いだ。

 中でもアジア調査会の五百旗頭(いおきべ)真会長の指摘は重要である。日米地位協定の改定の可否を問われた五百旗頭氏は、首相主導だった日本復帰を引き合いに「首相自身が米大統領へ毅然と要求すれば、動かざるを得なくなる」と述べた。問題は首相にその意思があるかどうかである。
 1995年の米兵による少女乱暴事件をきっかけに、当時の橋本龍太郎首相は県民の願いだった米軍普天間飛行場の返還をクリントン米大統領に求め、合意を得た。日本のトップリーダーである首相が本気になって米大統領に要求すれば、米側を動かすことができる一例である。
 ただ、その後、県内移設が条件だったため、県民の反発を招くことになるが、県内移設についても、米側と本腰を入れて沖縄の負担軽減を最優先させて交渉すれば、県内に移設しなくても普天間を返還できる方策が米側から出てくる可能性がある。日本復帰50年を迎えた今の沖縄にとって最も必要なのは、首相ら日本の指導者が基地負担軽減や日米地位協定の改定を米側に強く求めることである。
 岸田文雄首相は、沖縄の復帰50周年式典で祝いの言葉を述べる前に、やるべきことをやってほしい。50年たっても負担が何も変わらないことに重大な責任があることを認識すべきだ。
 上智大の宮城大蔵教授は、軟弱地盤の存在で技術的に長期にわたる建設工事の完成を待つのではなく、いかにして普天間飛行場を早期に返還できるか、辺野古以外の手法に注力すべきだと提唱した。岸田首相がやるべきことは、まさにそのような決断である。
政府の試算では、埋め立て完了するまでには最短でも12年かかる。改良が成功するかどうかも不透明である。
 2019年の県民投票では総投票者数の約7割が辺野古埋め立てに反対した。岸田首相が「世界一危険な飛行場」の危険性除去と言うのなら危険を長年放置するのは無責任である。「辺野古が唯一」を繰り返すだけなら思考停止と言わざるを得ない。
 登壇者たちの発言で浮き彫りになったのは、沖縄が日本に復帰しても全国の米軍専用施設の7割が集中し、自衛隊の配備が強化されている「基地の島」であり続けていることだ。復帰当時、県民が望んだ「基地のない平和な島」とはほど遠い。
 抜本的な基地負担軽減に取り組まない首相の姿勢は問題だ。岸田首相は沖縄に負担を強いている現状への責任を重く受け止め、姿勢を改めるべきだ。来月15日に迎える復帰50年の節目はその覚悟を表明する機会であってほしい。