<社説>施政権返還50年(6)基地負担 沖縄を軍縮交渉の要に


社会
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 米国から日本に沖縄の施政権が返されて50年たっても一向に変わらないどころか、むしろ増大しているのが沖縄の基地負担である。

 1972年の返還に向け当時、屋良朝苗行政主席は「基地のない平和な沖縄」を佐藤栄作首相に求めたが黙殺された。佐藤首相はニクソン米大統領との返還交渉で、有事の際に米国が沖縄に核兵器を再導入、貯蔵を認めた密約を結び、基地の最大限の自由使用も認めた。この日米路線が基地問題の源流となっている。
 新冷戦と言われる軍拡競争の中、基地が集中する沖縄は紛争や戦争に巻き込まれる可能性が高く、危険な状態にある。状況を変えるには、米中はじめ世界の主要国が軍事に頼る安全保障策を転換し戦争や紛争の火種を取り除くための対話を持続する国際的枠組みを作り、沖縄を要に軍縮交渉を進めることを提案したい。
 沖縄は基地があるため平時は米軍絡みの事件事故や騒音などに苦しみ、有事には核兵器の標的になる恐れがある。平和に生活し二度と沖縄戦のような戦場にしたくないとの思いが強い沖縄の人々にとって基地の存在は死活問題だ。
 1995年の米兵による少女乱暴事件をきっかけに日米は米軍普天間飛行場を含む11施設の返還に合意するなど負担軽減に取り組んできた。だが近年、沖縄の基地を巡る環境は一変し、米国は中国やロシアに対抗するため同盟国とともに軍事力を強めている。
 米軍の対中国作戦は、南西諸島からフィリピンにかけた第1列島線内側への封じ込めを基本とする。在沖米軍基地の戦略的重要性は高まった。県や県議会が削減や撤退を求めてきた在沖海兵隊の役割を再定義し新たな任務を与えた。米国は第1列島線に核弾頭を搭載可能な中距離弾道ミサイル配備も計画している。
 ロシアによるウクライナ侵攻の過程を見ると、戦争に至らせない対話の持続がいかに重要かが分かる。沖縄は平和を維持する交渉の場として「最適」と指摘されてきた。
 東西冷戦を終結に導いたミハイル・ゴルバチョフ氏は核軍縮などをテーマにした「人間の安全保障フォーラム」を沖縄で開催する意向を示している。平和学者のヨハン・ガルトゥング氏は北東アジアの国際組織の本部を沖縄に置き、北東アジアの平和の傘構想を沖縄から積極的に提起すべきだと主張する。
 鳩山由紀夫元首相は1980年代に欧州での反核、軍縮の動きの中で中距離核戦力(INF)廃棄条約が締結されたように、東アジア版INFの必要性を強調。沖縄から声を上げ、米国と協議することを提案している。
 軍縮に向けて国際社会と連帯するために沖縄が自治体外交を積極的に展開することも必要だろう。沖縄の基地を抜本的に減らすには、基地が要らない環境をつくることが肝要だ。沖縄はそのための信頼醸成の場になれる。