<社説>高校生歴史知識調査 沖縄を学ぶ機会の確保を


社会
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 沖縄の高校生の多くが日本復帰の日を正確に答えられないことが、歴史教育に関わる教員らでつくる沖縄歴史教育研究会による高校生へのアンケート調査で分かった。琉球・沖縄史全般への知識習得が十分でない可能性がある。

 他県には独自のカリキュラムをつくって地元の文化や歴史を学校で教えている地域もある。そのためには、教員が沖縄の歴史を学ぶ機会を設けることも必要だ。
 生徒は沖縄の歴史を学ぶことに高い関心を示している。県は沖縄の歴史を学ぶことができる環境づくりにさらに取り組んでもらいたい。
 調査は5年に1度。今回は日本復帰の日について1972年の4~8月の間の日を選択させる形式で聞き、正答率は22%だった。
 選択ではなく日付を記述させた2007年、12年調査でも正答率は11%と14%で低い傾向が続いている。
 沖縄戦の終結(降伏文書調印)で9月7日の正解を選んだのは13%。6月23日の慰霊の日を46%が選んだ。誤った認識が約半数に上ることは07年、12年調査でも同様だ。
 組織的戦闘が終結してもなお、民間人の被害があったことは沖縄戦の特徴の一つである。沖縄戦に関連する事柄を高校生らが十分理解できていないとすれば、県民が根こそぎ動員されて巻き込まれた沖縄戦の実相が正しく伝わっていない可能性がある。
 在沖米軍基地への考え方で「全面撤去」や「整理縮小」が約6割に達したのに対し、「分からない」が15%あった。これも過去調査と同じ傾向だ。
 研究会顧問の新城俊昭沖縄大客員教授は賛否の分かれる問題について考えることを避けている可能性に言及し、「本来は自分なりに考える必要がある」と教育の関与の重要性を指摘している。
 歴史に関する調査では、回答率が上がった設問もある。各校で独自に学ぶ機会を設けていることも考えられる。野国総管が琉球にもたらした食物で「イモ」の正答は52%。同じ設問で総管の地元の嘉手納、読谷の生徒の正答率は73%だった。幼い頃から見聞きする機会の高さだろう。
 カジマヤーの数え年については97歳の正答が30%に対し、トーカチ(米寿)の88歳を36%が選んだ。親族の祝いなどで耳にするなどして、言葉は知っているが正解できていない状況がうかがえる。こうした事例を集め、分析に当たることも必要だろう。
 最も注目すべきは高校生自身が沖縄の歴史、文化を学ぶことについて38%が「とても重要」、41%が「重要」と回答した。合わせて約8割が重要と考えている。
 歴史や文化に正しい知識を持ち、理解を深めることは、地元への誇りとなる。ひいては他の文化や歴史を敬う心を育む。国際社会に羽ばたく人材には語学力や海外での経験値を伸ばすと同時に足元を深く見詰める機会も必要だ。