<社説>施政権返還50年(8)自立経済 域内循環高める施策を

 沖縄の施政権が日本に返還されて50年。現在まで5次にわたる沖縄振興(開発)計画で道路や空港・港湾、ダムなど産業の基盤となる社会資本が集中的に整備され、企業の進出や人流・物流の活発化、リゾート開発などが進んだ。

 県民総所得に占める基地関連収入の割合は、復帰前の1965年に30・4%だったのが現在は5%程度まで低下するなど、経済は基地依存から脱却を見せてきた。一方で、全国最下位の県民所得や高い非正規雇用率、全国約2倍の子どもの貧困率など課題は多い。政府が予算の増減で基地の受け入れを迫る「アメとムチ」の構図も変わらない。
 基地依存経済、公的投資依存経済から脱却し、経済の自立を確立するという沖縄の目標はまだ途上だ。県民主体の自立的発展に向けて模索を続けなければならない。
 自立を阻む主要因が「ザル経済」だ。サービス業が突出するいびつな産業構造が、ドル経済圏に組み込まれた米統治時代から続いている。農業や製造業の生産力が脆弱(ぜいじゃく)で、生活に必要な物資の多くを移輸入に頼る消費偏重経済のため、県内で発生した所得が外に流れ出てしまっている。
 大城肇琉球大名誉教授が2013年の数値を基に算出したところ、地域経済の自立度を表す県内の「地域経済循環率」は78・8%で、47都道府県で下から4番目だった。所得の2~3割が域外に流出しており、公共事業で沖縄に投じられた資金も4割が県外企業に環流している。
 自立型経済には地場産業の育成で域内循環を高め、資本の蓄積を大きくしなければならない。沖縄経済はこれまで基地、公共事業、観光の3K経済と言われた。これからは環境や健康、教育、海洋、交易など沖縄が優位性を有する新たな「K」を育て、観光に続くリーディング産業を確立することが鍵となる。
 中でも農畜水産業は自給率を高め、沖縄ブランドとしてアジア市場で外貨を獲得できる有望分野だ。農業は観光の質の向上や離島の定住にも寄与する。ITを組み合わせた革新的な展開など、新産業として捉え直す価値がある。
 沖縄戦で破壊された沖縄本島の軌道系交通システムの構築は、国の責任で取り組むべき残された課題だ。本土では地域の経済基盤として国が鉄道網を整備したが、沖縄は公共交通が未発達なまま車社会が進んだ。高い移動コスト、渋滞による経済損失、高齢者や障がい者など車を持てない人を取り残す問題がある。鉄道や次世代型路面電車LRT、モノレール延伸など導入の検討を急ぐべきだ。
 合わせて公共交通利用を無料にして県民の生活コストを引き下げ、県内どこへでも自由に移動できるようにする独自施策を提案したい。定時・定速で安価な公共交通は脱炭素社会の実現にも通じ、県民全ての「移動権」を保障する福祉の向上を実現する。



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