<社説>施政権返還50年(9)自衛隊配備強化 専守防衛を貫くべきだ

 米国から日本へ沖縄の施政権が返還(日本復帰)されてから15日で50年となるが、今年は自衛隊が1972年4月に沖縄配備されてから50年の節目でもある。

 この間、急患搬送や災害派遣、不発弾処理など自衛隊が沖縄で果たしてきた役割は大きい。復帰当時、自衛隊を日本軍と重ねて反発した県民感情は、戦争体験者の減少とともに変化している。その一方で紛争や戦争を想定した南西諸島への配備強化が進む。
 それは在沖米軍と一体化する形で、自衛隊を戦争の前面に押し出す動きだ。政権党の自民が提起する「反撃能力」は敵基地を攻撃する内容で専守防衛を逸脱する。敵基地攻撃能力の保有は「国民の命と安全を守る」どころか、沖縄が相手から標的にされる危険性を高める。再び沖縄が戦場になることを拒否する。平和憲法の理念に基づく専守防衛を貫き、自衛隊の配備強化は見直すべきだ。
 2016年の安保関連法施行以降、日米の軍事一体化は急速に進んだ。この法律は日本への武力行使がない段階で集団的自衛権を行使するという憲法違反の内容を含む。
 日米は1月、南西諸島の自衛隊強化と日米の施設共同使用増加を発表した。台湾有事を想定した自衛隊と米軍の共同作戦は、初動段階で米海兵隊が南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置くとする。軍事拠点化の対象は大半が有人島で、住民が戦闘に巻き込まれる可能性が高いが、保護の議論は一向に進んでいない。
 また自民党が提唱する「反撃能力」を持てば、これまで米軍を「矛」、自衛隊を「盾」としてきた役割分担は、自衛隊が米軍の「矛」に合流することを意味する安全保障政策の大転換だ。攻撃対象はミサイル基地に限らず「指揮統制機能等」も追加され、際限なく広がる可能性がある。
 さらに自民党は、防衛費の上限として閣議決定された国内総生産(GDP)比1%を超え、2%を念頭に防衛費増額を提言した。国債など国の借金「長期債務残高」は2021年度末で1千兆円を突破した。国民1人当たり800万円の借金を背負っている計算だ。安倍晋三元首相は「防衛費確保のための国債発行」を訴えている。防衛費のためなら財政規律を無視して、将来世代につけを回すのか。
 借金を重ねて軍備を増強したとしても、想定する相手国も軍事増強するだろうし、結果的に「安全保障のジレンマ」に陥るだろう。
 沖縄に配備された自衛隊のミサイルは敵基地攻撃に転用される可能性がある。部隊配備や機能強化が進むと相手から標的にされる。77年前の沖縄戦で日米両軍の激烈な地上戦に住民が巻き込まれ県民の4人に1人が犠牲になった。「軍隊は住民を守らない」。その教訓に今こそ学ぶべきだ。相手に挑発と受け止められる軍備増強ではなく、衝突の火種を除く外交努力が肝要だ。



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