<社説>基地引き取り全国陳情 米軍基地は日本の問題だ


社会
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 在沖米軍基地を県外で引き取ろうと呼び掛ける全国各地の団体でつくる「辺野古を止める!全国基地引き取り緊急連絡会」が、沖縄への基地集中を見直すよう求める意見書の採択を全国の地方議会に働き掛ける活動を開始した。全国で議論を起こす新たな取り組みとして注目したい。

 沖縄の基地問題を沖縄の問題として人ごとにせず、日本全体で議論し、解決を目指す「日本の問題」にすべきだ。
 同連絡会は北海道、秋田県、山形県、新潟県、埼玉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県、長崎県で活動する基地引き取り運動の市民団体で構成している。各地で勉強会や街頭宣伝などに取り組むほか、連絡会としてシンポジウム開催、「沖縄の米軍基地を『本土』で引き取る! 市民からの提案」の出版などをしてきた。全国知事アンケートも繰り返し実施してきた。
 同連絡会は沖縄を除く46都道府県と約1700の市町村議会に陳情書を送る。陳情書では「沖縄に押しつけてきた基地は『本土』に引き取り、米軍基地問題を公平・公正に国民全体で議論して解決していくべきだ」とし、名護市辺野古の新基地建設を断念し、普天間飛行場を県外に引き取って日本全体で解決するよう訴える。
 沖縄の施政権返還から50年に際して報道各社が全国世論調査を実施した。社によってばらつきはあるが、日米安保条約と在日米軍基地を国民の多数が支持している一方で、沖縄への基地集中について「不平等」「集中しすぎ」という認識もかなりの割合に上ることが分かった。しかし、自分の地域で引き受けることには消極的で、結果的に沖縄への集中を容認している。
 これをどう変えていくかが課題だ。18年から「新しい提案」実行委員会が、全国の地方議会に陳情採択を求める運動を展開してきた。内容を普天間飛行場移設問題に絞り、沖縄以外の全国の全ての自治体を候補地とし、基地の必要性も含めて議論して、公正で民主的な手続きで決定することを求めた。今年1月時点で沖縄県内を含む全国1788の地方議会のうち採択は18都道府県の48議会にとどまっている。採択ゼロは大阪府など29府県もあり、理解が広がったとは言えない状況だ。
 民主党政権で防衛相を務めた森本敏氏が13日の講演で普天間飛行場の名護市辺野古への移設について「軍事的な必然性があったのではない。政治的に一番どこが望ましいか、実行可能かという基準を上位に置いて選択した結果だ」と説明した。15日の復帰50周年式典東京会場に出席した石破茂元防衛相は「とにかく県民所得を上げ、米軍基地を少しでも本土で引き受けなければならない」と述べた。
 連絡会の取り組みが、改めて全国で、基地問題を自分ごととして議論するきっかけになることを望みたい。