<社説>わいせつ教諭逮捕 相談体制の確立が急務


社会
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 県警捜査1課は、本島内の小学校で教諭の立場を利用して児童の体を触ったとして強制わいせつ容疑で元教諭の男を逮捕した。今後、公判で刑事責任が問われる見通しだ。

 発達途上の児童への性暴力は、人間としての尊厳を傷つけ心に深い傷を負わせる許しがたい行為である。被害児童の心と体のケアを最優先にするとともに、児童生徒が被害を訴えやすい相談体制を早急に確立してもらいたい。
 逮捕容疑は1月、教職に就く本島内の小学校で同校に通う児童=当時=の体を触るなどわいせつな行為に及んだ疑い。県警によると、元教諭の男は、就業時間内の校内で小学児童と2人だけになる状況を作り出し、人けのない場所で犯行に及んだ。
 文部科学省によると、わいせつ行為やセクハラを理由に2020年度に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は200人で、うち児童生徒らが「性暴力・性犯罪」の被害者だったケースは96人に上る。わいせつ行為で懲戒免職となり免許を失効した元教員の復職を厳しく制限する「教員による児童生徒性暴力防止法」が4月1日に施行されたばかりだ。
 防止法は、児童生徒や18歳未満に対する性交、わいせつ行為のほか、性的羞恥心を害する言動などを「児童生徒性暴力」と定義。「回復し難い重大な影響を与える」として、禁止を明記した。わいせつ行為で懲戒免職となり免許を失効した場合、都道府県教育委員会が「適当」と認めなければ再取得できないとした。
 わいせつ行為による免許失効者の情報を登録するデータベースも整備され、来年中の稼働を予定する。子どもへの性暴力対策を巡っては政府が、こども家庭庁の目玉政策として、性犯罪者が教育や保育の仕事に就けないようにする「無犯罪証明書」の導入を検討している。
 教員と児童生徒は力関係に大きな差があり、教育現場は性暴力が起きやすい構造にある。専門家は「小・中・高校には、被害を受け教師に不信感を抱いても、子どもが相談できる専門の窓口がないのも問題」と指摘している。早急に相談体制を整え、児童生徒が訴えやすい環境整備を確立してもらいたい。
 子どもの性被害をなくすためには、加害者側を規制するだけでは不十分だ。
 徳永桂子さん(思春期保健相談士)によると、子どもたちに、自分の体を大切にする自尊感情を育てることや幼児期からの性教育が必要だと指摘する。「体は自分だけのもの。誰かに『見せて』『触らせて』などと言われたら、『やめて』と言ったり逃げたりして相手と距離を取ること。大人に話すことも大事」だという。参考にしたい。
 児童生徒と向き合う時間に加え、性の知識について教員自身が学ぶ機会を確保する必要がある。多忙な教員の労働環境の改善も必要だ。