<社説>普天間高濃度汚染 政府が健康調査すべきだ


社会
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 米軍普天間飛行場で、現行の国の暫定指針値の576倍という高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が検出されていたことが分かった。検査結果を知らされていなかった県は「地下水汚染は確実」と問題を指摘している。

 徹底した水質検査を日米両政府が実施する必要がある。PFASによる河川や湧き水などの水質汚染は普天間周辺だけでなく、嘉手納基地やキャンプ・ハンセンの周辺でも確認されている。周辺住民の不安を解消するために、広域的な健康調査も政府の責任で実施すべきだ。
 琉球新報が在沖米海兵隊の内部資料を米国の情報公開制度で入手した。2016年2月の調査で、有機フッ素化合物のPFOS(ピーフォス)が1リットル当たり約2万7千ナノグラム、PFOA(ピーフォア)が同約1800ナノグラム検出されたことが記録されていた。
 20年に環境省が定めた国内の指針値(PFOSとPFOAの合計が1リットル当たり50ナノグラム)に照らして576倍にもなる濃度だ。
 検出地点は飛行場内北側の「消火訓練施設」となっており、高濃度汚染の要因として、PFASを含むとされる「水成膜泡消火薬剤(AFFF)」を使用した訓練によると説明がされている。検出場所は基地フェンス付近と水路でつながっている可能性も示されており、汚染水が基地の外に流出した恐れがある。
 公開された資料には「地元の飲料水が軍の水源の影響を受けないのであれば、質問に答える必要がない」との記述もあり、問題を矮小(わいしょう)化し、調査結果を公表せず済まそうとしていたことがうかがえる。地元住民の安全を軽視している。県民から基地内の使用実態や汚染状況が見えないまま、PFAS汚染が続いている可能性が否定できない。
 北谷浄水場の取水源の一つとなる河川や、金武町の水道水の水源からもPFASが検出されている。「有機フッ素化合物汚染から市民の生命を守る連絡会」は、6月下旬にも県内6市町村の住民約350~400人を対象に血中濃度を調査するという。京都大と協力し、有害物質が体内に取り込まれていないかを調べる。市民団体がこれだけの調査を行うのは例がない。
 だが、調査は本来、政府が責任をもって実施すべきだ。憲法25条は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と国民の生存権を保障する。政府は県民の健康影響を広範囲に調べる必要がある。飲み水の安全確保のため水質調査など必要な措置をとり、汚染源である可能性が高い基地内の立ち入り調査を実施すべきだ。
 米軍に排他的管理権を認めた日米地位協定が壁となり、県の再三の要請にもかかわらず、汚染源を特定するための基地内の立ち入り調査は実現していない。県民の生命と健康を守るために、日米地位協定を抜本改定するしかない。