<社説>外来機飛来常態化 負担増の放置を止めよ


社会
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 米軍嘉手納基地で1日に外来機22機が飛来したのをはじめ、5月末から計29機の外来機飛来が相次いだ。嘉手納基地への外来機飛来は常態化している。騒音の増加など住民への影響は甚大である。

 政府が言う「沖縄の負担軽減」に明らかに逆行している。これ以上の「負担増」を放置してはならない。政府は米軍に対して外来機飛来を止めるよう今すぐ行動すべきだ。
 外来機飛来に対しては、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)を構成する沖縄市、北谷町、嘉手納町の首長がそれぞれ認められないと反発している。玉城デニー知事も「認め難い」と不快感を示した。
 当然であろう。沖縄防衛局の2017年4月から21年11月の調査では、嘉手納基地で午後10時から午前6時の夜間早朝の離着陸は毎年千回を超えている。中でも18、19、20年は夜間早朝の離着陸のうち約半数が外来機だ。
 ただでさえ夜間早朝の騒音に悩まされる住民にとって、外来機によって騒音が倍増しているといえる。1日に飛来したのは三沢基地のF16戦闘機が10機、ハワイからのF22Aステルス戦闘機12機などだ。県によると、1、2の両日には「電車が通るときのガード下」に相当する100デシベル超の騒音を観測したという。
 米空軍安全センターの19会計年度(18年10月~19年9月)事故統計によると、F22は「クラスA」とされる重大事故を6件起こし、10万飛行時間当たりの事故率が21.48件で最多だった。これだけ事故率が高いF22が飛来すれば、県内でも重大事故を起こさないか懸念が高まる。
 5月29日には空母艦載機のFA18E戦闘攻撃機が嘉手納基地に目的地変更した際、燃料タンクを公海上に投棄した。安全確保などの目的とはいえ、米軍の都合で、どこにでも長さ5メートルを超すタンクを投棄する可能性がある。騒音だけでなく事故の可能性も外来機は持ち込んでいる。
 この状況を政府が深刻に受け止めているのか甚だ心もとない。タンク落下などで県の抗議を受けた際、小野功雄沖縄防衛局長は外来機飛来に関し米側の説明を繰り返し「影響が極力少なくなるよう」米側に配慮を求めたという。岸信夫防衛相は5月30日の参院予算委員会で騒音の現状を聞かれ「沖縄ではそんなにひどい騒音はなかった」と個人の経験のみを語った。
 「静かな夜を返せ」と第4次嘉手納爆音訴訟で過去最多の3万5566人が提訴した事実をどう受け止めているのか。岸氏は地元の山口県岩国市で激しい騒音を経験したという。同じように沖縄にも思いを向けてもらいたい。
 沖縄の陸も海も空も米軍が勝手し放題の演習場ではない。米側に「配慮してもらう」のでなく、憲法で保障された平和的生存権を沖縄にも等しく適用するよう政府が全力を挙げて米側と交渉すべきだ。