<社説>オスプレイ軍港使用 厳格な使用条件の締結を


社会
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 米軍による県土の蹂躙(じゅうりん)だ。

 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが6日、那覇港湾施設(那覇軍港)に着陸した。県や那覇市が米軍機の軍港使用は一切認められないと申し入れてきたにもかかわらず、それを無視し、通達なしにまたも飛来させたのである。
 米軍の傍若無人な振る舞いは許されない。それをとがめない日本政府も独立した国家なのか問われる。基地の使用条件を厳格に定めた協定を新たに締結する必要がある。
 在沖米海兵隊は昨年11月、オスプレイやCH53E大型輸送ヘリコプターなどを那覇軍港に飛来させ、輸送船に積み込んだ。那覇軍港にオスプレイが着陸するのが確認されたのは初めてで、県や沖縄防衛局に事前に連絡はなかった。
 今年2月には、在沖米海兵隊が「非戦闘員避難」などの名目で訓練を実施した。海兵隊員を乗せたオスプレイやヘリコプターなどが港内に離着陸し、基地内の建物を大使館に見立て、武装した隊員が警護する様子も確認できた。
 沖縄の日本復帰に当たって基地の使用条件などを定めた1972年の日米合意(5・15メモ)は、那覇軍港の使用主目的を「港湾施設および貯油所」としている。玉城デニー知事や城間幹子那覇市長は、航空機の軍港使用や訓練使用は「(5・15メモの)使用主目的に反している」として抗議してきた。
 港湾が航空機の離着陸場所でないことは、5・15メモによるまでもない。
 那覇軍港は市街地にあり国道に面する。航空機の飛行で事故の危険性や騒音の被害は大きくなり、市民、観光客の安全を脅かす。那覇空港に近接しているため、民間機の発着にも支障を来し、重大な事故を招きかねない。
 だが、米軍は今回も事前の連絡なくオスプレイ3機を飛来させた。5・15メモを拡大解釈し、使用の既成事実を積み重ねている。このまま常態化を許すわけにいかない。
 基地提供者である日本政府が直ちに抗議すべきだ。しかし、岸信夫防衛相は「港湾施設の使用主目的に合致する」と迎合し、日本側に事前連絡がなかったことさえ問題にしない構えだ。米軍の都合を優先し、県民の安全をないがしろにしている。
 米軍は「船に載せるため」と軍港への飛来の目的を正当化する。だが、本当に那覇軍港でなければならないのか、飛行させず陸送で運ぶ手段はないのか、疑問に全く答えていない。日本政府は米軍の見解を追認する前に、徹底して説明を求める責任がある。
 日本政府が米軍に異を唱えないのは、米軍基地間の移動を無制限に認めている日米地位協定の問題がある。米国との関係が本当に対等であるならば、基地使用条件について拡大解釈の余地のない協定を結び、しっかりと順守させることが主権国家として当然の在り方だ。