<社説>激戦地土砂採掘合意 国は新基地建設断念せよ

 沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の鉱山での土砂採掘計画を県が容認した。総務省の公害等調整委員会の裁定委員会が提示した、採掘事業者との合意案を受け入れた。遺骨発見時に2週間工事を中止し遺骨収集することなど条件を付けているが、県内では遺骨が土砂に混入する懸念は変わらないとの反発もある。

 風化が進む遺骨が土砂に混じっているかどうかは、目視では確認が難しい。合意案では事業者の通報があって初めて遺骨収集が実施される。事業者任せではなく、第三者による客観的な判定は必須だ。
 激戦地だった本島南部の土砂採掘が問題になった原因は、米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設だ。判別しにくく遺骨が入っている可能性のある土砂を基地建設に使う計画は人道に反する。戦没者への冒とく
だ。国は計画を断念すべきだ。
 そもそも新基地建設は困難である。建設予定地で見つかった軟弱地盤は海面下約90メートルに達する。政府は同70メートルまでの改良で問題ないとするが、根拠は明確ではない。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は「完成する可能性は低そうだ」と実現を困難視している。
 国は軟弱地盤改良のために設計変更し、土砂の調達先を県全域に拡大した。必要な土砂の量が当初の6・7倍に上ったからだ。県内分のうち南部地区(糸満市・八重瀬町)は7割超に達する。
 沖縄戦で軍人・軍属含む県民の犠牲者の6割は南部で命を落とした。全国から派兵された日本兵だけでなく米兵の遺骨も残っている可能性がある。そのような土地の土砂を新基地建設のために大量に使うこと自体が道義に反する。
 県が合意した案では、遺骨発見時の遺骨収集や、表土の保管、埋め戻しまでの間はいつでも遺骨調査が可能な状態にするなど条件を付けた。
 だが県は独自の条例制定で戦跡公園の保全を図ることや、条例制定に向けたワーキングチームでの議論などを進展させていない。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんが求める遺族への意見聴取もせずに合意案を受け入れた。手を尽くしたとは言いがたい。
 土砂に混じった遺骨の判別も課題だ。具志堅さんは「遺骨は石灰岩や土の色と同化している。見た目ではほとんど分からず、手で持った重さでようやく判別できる」と語る。
 那覇市と南城市の議会は遺骨を含む可能性がある土砂を埋め立てに使わないことや国の責任で遺骨を収集するよう求める意見書を出している。
 岸田文雄首相は「慰霊の日」の23日、遺骨と土砂の問題について「県民の皆さんが重く受け止め、深刻に考えていることは政府としてもしっかり受け止めている」と述べた。それが本当なら、新基地建設を即刻断念し、国策の犠牲となった人々の遺骨収集を、責任を持って実施すべきだ。



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